民放キー局で、アナウンサーの退社が相次いでいる。何が起きているのか。コラムニストの木村隆志さんは「以前よりも、アナウンサーにこだわるという意識が薄れている」という――。
フジテレビ
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アナウンサー退職ラッシュが意味すること

アナウンサーの退社が次々に報じられ、そのたびに民放テレビ局の危機が叫ばれている。

特にフジテレビは小澤陽子アナ、勝野健アナ、竹内友佳アナの退職が相次いで報じられ、「1年で8人『退職ラッシュ』」「退社ドミノ」「歯止めがきかない」などと危機をあおる記事が続出。2025年の騒動に関連付けて「アナウンサーから見切りをつけられた」というニュアンスの内容が目立っている。

他局でも、日本テレビの岩田絵理奈アナ、ABCテレビの増田紗織アナ、NHKの和久田麻由子アナの退社が報じられたほか、今年1月に良原安美アナがTBSを退社したことも記憶に新しいところ。

はたしてアナウンサーたちに何が起きているのか。また、特に退職者が多いフジは本当に危機なのか。

長年、業界内のアナウンサーと交流してきた経験や直接聞いたエピソードを踏まえて、意外に複雑な退社の理由、その背景、さらにAI化をめぐる実情などを掘り下げていく。

退社が増えている最大の理由

多くのウェブメディアが「退職ラッシュでテレビ局の危機」などとあおっているが、これらは目先のPV稼ぎが目的であり、あまり実態を知らないのではないか。アナウンサーをめぐる状況はそんなに単純ではなく、一般企業の社員と似たところもある。さらにフジのアナウンサーはむしろ自他ともに「恵まれている」と見られることも少なくない。

年に数回アナウンサーにまつわるコラムを書いているが、記事としてアップされると本人や関係者から「ありがとう」と言われる。彼女ら、彼らにしてみれば「アナウンサー関連の記事はその多くが嘘か一部の誇張ばかり」であり、日ごろ悔しい思いをしていることはあまり知られていない。

このところ退社が増えている最大の理由は、「アナウンサーたちのワークライフバランスやキャリアプランの意識が高まり、多様化している」から。

かつてアナウンサーの主な選択肢は、「退社してフリーアナウンサーとして勝負するか」「結婚か出産をきっかけに退社するか」「不本意ながら他部署への異動を受け入れるか」の3つと言われていた。逆に40代になってもベテランとして番組出演しているアナウンサーはごくわずか。華やかなイメージとは裏腹に厳しい競争と残酷な現実があった。