「中居問題」の影響はゼロではないが…
フジだけでなくテレビ局にとってアナウンサーは採用・育成してきた財産。難関の採用試験を突破した優秀な人材であり、入社後にアナウンス技術、情報収集力、知名度や好感度などを得たアナウンサーは「出演費の経費削減」という意味でも大切な存在にほかならない。局内で再評価され、「良い関係性を築こう」という姿勢が見られるようになっている。
昨年の騒動が「アナウンサーの退社にまったく影響していない」とは言えないが、よい変化もあった。
編成局の一部署だったアナウンス室が昨年7月に、独立してアナウンス局に昇格。また、アナウンサーと番組サイドの調整を担い、ともにキャリアプランを考えていくマネジメント・プロデュース部が新設された。その変化が本格的に生まれていくのは今年4月以降と言われており、退社しないことで得られるメリットが増えていくのかもしれない。
これらは決してフジを擁護したいというわけではなく、他局や一般企業と比較した上でのフラットな目線。もちろん全員が満足しているとは思わないが、それはテレビ局に限らずどの企業にも該当することだろう。
アナウンサーのAI化は進まない
最後にアナウンサーを取り巻く報道についてもう1つ掘り下げておきたいのは、よくいわれるAI化の現実。
今回のようなネガティブな記事が出ると必ず「アナウンサーはAIに置き換えられていく」という話が正論のようにコメントされるが、少なくとも現在その選択肢はかなり優先度が低い。
アナウンサーはタレントと同等レベルの注目度や知名度があるほか、好感度が高く局や番組のイメージアップに貢献し、タレントの報酬より安く起用できる。さらに報道への信頼を得るためにも、時に感情が入り交じったアナウンスができる人材が必要であり、少なくとも現段階では「AIは現実的ではない」という。
実際、放送・配信・イベントなどを問わず「タレントを筆頭に出演者がAI化していない」という現実がある。世間の人々がまだ受け入れていないにもかかわらず、コスパがいいアナウンサーをわざわざAIに変えるテレビ局などないのだろう。
繰り返しになるが、アナウンサーの退職者だけが多いというわけではなく、「社員が退社しても毎年新人が入社してくる」「定年まで1つの職種で勤め続ける人が少ない」なども含め、一般企業と変わらない点が多い。
賢明な人なら、ここであげてきたような実情に目を向け、一部を切り取って「大量退社」などと掲げる恣意的な記事に流されないのではないか。

