リスクが大きく、割に合わない仕事

アナウンサーの退社について見逃せない背景がもう1つある。

それは「リスクが大きく、割に合わない仕事」という肌感覚が増していること。難関を突破してアナウンサーになれたとしても、会社員であるにもかかわらず局内外でタレントのような視線にさらされ、若手登竜門の情報番組では未明からの勤務を命じられ、不規則な生活になるなどプライベートもままならない。

さらに新人でも言い間違いなどのミスを厳しく指摘されるほか、体調不良で番組を1日休んだだけでニュース化されるなどのプレッシャーを受け、通勤や食事のときも追いかけられて、ファッション、ヘアメイク、飲食のメニューなども含めて盗撮される。学生時代のことや写真なども発掘され、あることないことを書かれ、家族や恋人を傷つけてしまうことも……。

早朝や深夜の勤務、友人や恋人と休みが合わない、周囲の視線がつらい、外出もままならないなどの理由から若手アナウンサーは入社前に抱いていたイメージとのギャップを感じやすい。実際、話していても「局と家を往復するだけ」「休日は家でドラマかアニメばかり見ている」と自虐的に語るアナウンサーは多く、長年続けていく難しさを感じて退職しても不思議ではない。

寝室のベッドに一人で座っている女性の背面
写真=iStock.com/Farknot_Architect
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フジテレビは「恵まれている」

アナウンサーたちの感覚や価値観はタレントより一般の会社員に近く、特別な自己顕示欲や欲深さは感じられない。むしろ地味な生活を余儀なくされて控え目な印象の人が多いのだが、仕事環境の厳しさやプライバシーが考慮されないことなども影響しているのではないか。

また、人事異動に関する心ない声もアナウンサーが退社を考える理由の1つ。社内的には「本人のスキルや適性を踏まえた前向きな異動」であるにもかかわらず、記事やSNSに「実力不足か加齢による左遷」と書かれてしまうケースが大半を占めている。そもそも会社員であるにもかかわらず、異動が全国に知られてしまうこと自体つらいところだ。

次に「大量退社」などと揶揄されがちなフジについて。

あまり知られていないが、フジのアナウンサー待遇は決して悪くないと言われていた。業界内では「育休利用者や復帰後に活躍するアナウンサー、他部署に異動して活躍する元アナウンサーは他局よりも多い」という声が聞こえてくる。ここで名前はあげないが、少し調べれば「あのアナウンサーがビジネスパーソンとして活躍しているのか」と気付くはずだ。

また、コロナ禍以降は局も番組もリスク回避の観点から勤務形態を変更。事実、6人の同局アナウンサーから「通常勤務にゆとりができて過重労働はない」「体調が優れないときは休める」「まとまった休みも取りやすくなった」などと聞いていた。さらに中堅・ベテランになるほどこれらのメリットを実感し、「ウチは恵まれている」と話す人が多い。