農家の収入差はどこで生まれるか
ここまでに述べたように、当然のことですが、ひと口に農家といってもさまざま。コメ農家以外でも、小規模な自給的農家、中規模の家族経営農家、大規模な農業法人等があり、じつに多様です。
さらに規模だけでなく、栽培品目もさまざまです。大きな括りだけでも、コメや麦などの「穀物」、根菜や葉ものなどの「野菜」、りんごやみかんなどの「果樹」、牛や豚、鶏などの「畜産」があります。ここまでご説明すれば、それぞれの農家が儲けているかいないかなどは、バラバラだということは自ずと見えてくると思います。
農業においても、儲かる人と儲からない人がいるのは当然のことです。資本主義社会では、経営努力や工夫、判断の違いによって結果に差が出るのは自然な現象です。農業だけが特別に「みんな同じように守られるべきだ」と考えるのは、基本的には市場経済の原則とは合いません。
実際、規模を拡大し、コストを下げ、販路を工夫し、ブランド化や輸出に挑戦することで利益を上げている農家もいます。一方で、高齢化や人手不足、地理的条件の厳しさなどにより、思うように収益を上げられない農家も存在します。この差が生まれること自体は仕方がないでしょう。
農業の他産業とは異なる側面
しかし、農業には他の産業とは異なる側面があります。それは、農業が単なる「個人の商売」にとどまらないという点です。農業には「市場で競争する産業」という側面と「社会全体を支える基盤」という側面の両方があります。
農村地域は、水路や農道の管理、田畑の維持を通じて、洪水の防止や土砂災害の抑制といった役割を果たしています。水田には雨水を一時的に貯める機能があり、都市部の治水にも間接的に貢献しています。また、耕作が続けられることで、雑草や害獣の拡大を防ぎ、地域の景観や環境、生態系が保たれます。こうした働きは、市場価格には十分に反映されませんが、社会全体の維持においては非常に大切な機能です。
さらに農業には「食料安全保障」という観点もあります。世界情勢が不安定になれば、輸入が滞ります。ですから、国内に一定の生産基盤があることは、いざという時の保険のような役割を果たします。これは個々の農家の利益とは別の、国家的な視点です。そのため、農業政策は単純に「農家を守るか守らないか」ではなく、役割に応じた支援をどう設計するかが重要になります。
