大規模化すればいいわけではない

こういうと「農業は大規模化すればいい」と考える人もいるでしょう。確かに、日本の稲作は効率化の観点から、大規模化が必要です。広い農地を集約して経営することで、機械化や労働効率の向上が進み、生産コストを下げやすくなります。

しかし、大規模化すれば全てが解決するといえるほど単純な問題でもありません。

そもそも、日本は平野部が少なく、山の多い国です。農地に小区画の水田が多いのは、中山間地域など地形的に大規模化が難しい土地が数多く存在するからです。そうした地域では、小規模農家が水田を維持し、農地の荒廃や耕作放棄地の拡大を防ぐ役割を果たしています。仮に大規模農家だけになれば、条件の悪い農地は切り捨てられ、里山の管理が難しくなる可能性もあります。美しい里山の景観や環境は、こうした農家が守っている部分が大きいのです。

したがって、日本の稲作政策においては大規模農家の育成を進めつつも、地域条件に応じて中小規模農家が担う役割も評価することが重要です。攻めるところは攻め、守るところは守る。多様な経営体が共存する構造こそが、日本の水田農業を持続的に維持するための現実的な形だといえるでしょう。

山の傾斜面に広がる段々畑・棚田
写真=iStock.com/GI15702993
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米価高騰でコメ農家は儲かったか

では、今回の米価高騰によって、コメ農家は儲けているのでしょうか。スーパーでのコメの販売価格や取引価格は上がっています。そのため「農家は儲かっているはず」と感じる人も多いでしょう。もちろん、一時的に儲かった農家もいるでしょうが、その前までは非常に低価格で利益も薄かったのです。

しかも、ここ数年で、肥料や農薬、資材の価格が大きく上昇しています。さらに田植えや収穫、精米工程には、大量の燃料や電気を使いますから、その影響も小さくありません。販売価格が上がったと同時に経費も増大しているため、手元に残る利益がさほど大きく増えているとは限りません。

また、農家によって状況は大きく異なります。大規模農家は、販売量が多い分、価格上昇の影響を受けやすいでしょう。一方、小規模農家は販売量が限られているため、収入への影響はそれほど大きくありません。さらに事前に価格を決めて出荷している場合、今回の高騰がそのまま反映されていない場合もあるのです。

加えて、米の価格は収穫量と需要によって毎年変動します。今年は高くても、来年も同じとは限りません。そもそも天候によって収穫量が大変少ない年もあります。一時的に収益が上がったからといって「安定して儲かる産業になった」とはいえません。早くも令和8年産は米価下落の兆候が見られ、現場の生産者は身構えている状況です。