偽の「再接続サービス」に騙されたロシア兵

ウクライナ側のある組織は今回の通信遮断を巧みに利用し、心理戦でもロシア軍を追い詰めた。ボランティア団体InformNapalmが標的にしたのは、スターリンクに再接続しようと焦るロシア兵の心理だ。

同団体のミハイロ・マカルク広報担当はBBCに、「手口は単純です」と述べた。接触してきたロシア兵をもっともらしく非公開チャットに誘い込み、極秘に再接続できるよう代行サービスを提供していると装う。兵士は端末情報を何の疑いもなく開示し、一部は本当に再接続できると信じてオンライン決済で計5000ドル(約77万5000円)を支払った。

こうして詳細情報を特定されたスターリンク端末は、2425台に上る。分布はクリミア半島南部からベラルーシ東部ゴメリ市まで広範囲に及んだ。前線付近で特定された端末の位置は、すなわちロシア軍部隊の位置を示している可能性が高い。多くは、ウクライナ軍の砲撃やドローン攻撃の標的となったという。

ロシアのFSB保安庁は、兵士にこうした詐欺への警戒を呼びかけている。だがフィッシング作戦の打撃は金銭被害にとどまらない。「彼らはもう互いを信用していない」とマカルク氏は語り、オンラインで情報交換するロシア兵同士が疑心暗鬼に陥っていると述べた。

衛星インターネットサービス「Starlink」の地上アンテナ
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兵士の不満「ロシアの衛星通信はクソ」

追い詰められたロシア軍は、代替手段を必死に探している。だが、選択肢は限られている。

ロシアのTelegramチャンネル「Colonelcassad」は、「現時点でスターリンクの代替手段は存在しない」と認め、代わりの通信網の確保には時間がかかるとの見方を示している。

自前の通信網がないわけではない。ロシアの国営エネルギー企業ガスプロムは、同名の衛星通信サービスおよび通信端末を提供している。だが、「動作はしているが、接続速度で遅れをとっており、開発や改良が必要」という状況だとウォー・ゾーンは指摘する。

前線の声はさらに厳しい。キーウ・ポストによると、ウクライナ軍情報総局(HUR)が傍受したロシア兵の通話では、ガスプロム通信システムへの不満が飛び交っていた。

「俺の知る限り、あのガスプロムってやつはクソもいいとこだ」「確かにガスプロムで動く。つながればの話だけどな」。大規模なVDV(空挺部隊)第76部隊に配備された端末でさえ、「動画のストリーミングすら処理できなかった」という。ドローンの遠隔操作には、リアルタイムの映像確認が欠かせない。ガスプロムが使う「ヤマール衛星群」はわずか5基の静止衛星に頼っており、前線全域をカバーするには到底足りない。