逃げ場のない恐怖を描いた名画

かつて皇女を名乗った女性が、ネズミと共に溺死を待つ最期の時。窓から流れ込む濁流、上昇する水位、そして逃げ場のない恐怖。

ムンクは何を叫んでいるのか?
井上響『ムンクは何を叫んでいるのか?』(サンマーク出版)

公式記録では、タラカーノヴァは「病死」したことになっている。しかし、この絵が制作された19世紀には、誰もがその「真実」を知っていた。

なぜ皇女は水没する牢獄にいるのか?

それは、権力者にとって「正統性」を主張する者ほど危険な存在はないからだ。

真偽などどうでもいい。脅威は排除する。それが権力の論理だった。

豪華なドレスは、彼女がかつて名乗った高貴な身分の名残。

しかし最期は、ネズミと共に汚水に沈む運命だった。

この絵は、権力闘争の非情さを描いた、ロシア史の暗部なのだ。

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