捕らわれたピョートル大帝の孫娘
当時のロシア皇帝は女帝エカチェリーナ2世(在位1762~96年)。
しかし彼女には致命的な弱点があった。
ロマノフ王朝の血を引いていなかったのだ。ドイツから嫁いできた彼女は、クーデターで夫を廃して即位した「よそ者」だった。
そんな時、パリに衝撃的な人物が現れる。
「私こそ、偉大なるピョートル大帝の孫娘、タラカーノヴァである」
ピョートル大帝といえば、ロシアを列強に押し上げた伝説的皇帝。その直系の子孫を名乗る女性の出現は、エカチェリーナにとって悪夢だった。
真偽は不明だった。しかしこの話が本当なら、正統な血筋を持つ彼女こそが真の皇帝だと主張する者が必ず現れる。
絶対君主エカチェリーナ2世の決断
エカチェリーナの決断は迅速かつ冷酷だった。タラカーノヴァを騙して捕らえ、ペトロパヴロフスク要塞の地下牢に幽閉した。
そして1777年、運命の日が訪れる。
ネヴァ川が氾濫し、要塞全体が浸水した。
地下牢の囚人たちには、逃げる術がなかった。
この絵が描くのは、まさにその瞬間だ。

