今の暮らしでは、買い物に出たからといってお店のひとと話す機会はまずない。でも、フルフルではお店のひとと会話が生まれる。

「コロッケ、出来たてです」「これ、おいしいですよ」「どんなパンが好きですか?」

声をかけてもらうと、思わずこちらも笑顔になる。

スタッフさんの声がけと同時に売り場に並ぶ、焼きたてパンや揚げたてコロッケにお客さんの手が伸びる。運ばれてくるパンはどれも、小さなスペースに並ぶくらい少しずつだ。もちろん、筆者も出来たてコロッケをトレーにのせた。

こんなお店が近くにあったら、毎日でも足を運んでしまいそうだ。ちなみにフルフルは火曜定休で、お盆もお正月も休む。行こうと思い立ってあちゃーとなる日がたまにある。

国産小麦パン工房フルフル松崎本店内
筆者撮影
店内にはバラエティ豊かなパンが並ぶ。真ん中のパンは人気No.2の「栗とマカダミア」

“日本一のパン”を生み出した好循環

なぜ、フルフルの明太フランスは日本一売れるのか。

外はパリパリ、中はもっちり。ちゃんとピリッとする明太子をバターがまろやかに包み込む。パンをちぎる手は止まらない。1日150回焼き上げる焼きたてへのこだわりが、家まで待てないほどの魅力を生んでいる。

でも、それだけではない。

カット販売も焼きたてへのこだわりも、野菜の直売所も、すべて現場のスタッフやお客さんの声から生まれたものだ。フルフルのパンを好きなひとたちが集まり、おいしく食べてもらうためのアイデアが生まれ、形になる。そのパンとひとに引かれて、またひとが集まってくる。この循環が、フルフルの明太フランスを日本一にしている。

パン好きのスタッフたち
筆者撮影
パン好きのスタッフたちが迎えてくれた

最近では冷凍技術を活かし、通販やふるさと納税でも購入できるようになった。焼きたての味を家庭で再現できるよう、トースターでの焼き方まで説明書に記されている。

フルフルのパンがおなかを満たし、働くひとたちの笑顔や思いがお客さんの心を満たす。効率が優先される時代に、失われてきた大事なものがここにはあるように感じた。店内をぐるりとまわり、パンを買った頃にはもう、出来たてコロッケは売り切れていた。

後編では、明太フランスが生まれるまでの道のりを、3代目社長の古田量平さんに聞く。

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