アイスクリーム屋の熱き闘いの勝利

だが、イランとの合意に関しては、様子が違った。合意の拒否は戦争につながりかねない、とユダヤ人の間でオバマ外交を支持する声が高まった。

そうした議論の先頭に立ったのが、『ベンとジェリーのアイスクリーム』というブランドで知られている企業の経営者である。世界中で店舗を展開している。日本でも一時期、表参道や吉祥寺などにもあった(現在は撤退)。

BEN&JERRY’S(ベン&ジェリーズ)のストロベリーチーズケーキアイス
BEN&JERRY’S(ベン&ジェリーズ)のストロベリーチーズケーキアイス(写真=MichalPL/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

経営者のベン・コーエンとジェリー・グリーンフィールドは、どちらもユダヤ系である。二人はリベラルな組織「ムーブオン・オルグ」を通じて核合意への支持を呼びかけた。その結果、多くの人々が核合意に反対した議員には寄付を行わないとの誓約に署名した。

こうした動きも受けて、議会で合意支持派が票を伸ばした。そして、支持が三分の一を超えた時点で勝負がついた。投票そのものが行われなかったのだ。アメリカ議会の反対派は核合意の成立を阻止できなかった。

それはアメリカの合意承認を意味する。アイスクリーム屋の熱い闘いの勝利でもあった。

米ユダヤ社会の新しい流れに

オバマにとっても大きな政治的な勝利となった。

アイスクリーム屋の二人の働きが象徴したのは、アメリカのユダヤ社会の新しい流れであった。つまり、イスラエルの将来を本当に思うのであれば、それは盲目的な支持ではなく、批判的な姿勢が時には必要であるとの考え方である。

ちなみに、このアイスクリーム屋の二人はニューヨークの出身だが、「ベンとジェリー」という会社をバーモント州の最大都市バーリントンで創業している。最大といっても人口は5万人にも満たないのだが。

バーモント州はアメリカ東北部のカナダに接する州である。この州選出のバーニー・サンダースは、アメリカでは最もリベラルな政治家の一人として知られる。やはりニューヨーク出身のユダヤ教徒で、バーリントン市長としてその政治家としてのキャリアを始めている。