会議でどんな提案が出ても反論する人は何を考えているのか。心理学者の榎本博明さんは「このタイプの心の中には、『自分は正義の味方だ』といった自己陶酔がある。そこに潜んでいるのは、劣等感と歪んだ優越感だ」という――。

※本稿は、榎本博明『【新装版】かかわると面倒くさい人』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

怒っているビジネスマン
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独りよがりの正義感を振りかざす人

ネット時代になって目立つのが、独りよがりの正義感を振りかざす行為だ。

自分なりの正義感からみて、落ち度があると思われる出来事があると、「許せない!」といった感じで攻撃する。

たとえば、消防団員が消防車を店の駐車場に止め、制服のまま食事しているのを見つけると、

「勤務中に食事をするのはけしからん」
「消防車を私用に使うのは許されないことだ」
「これは市民の税金の無駄遣いだ」

などと非難する。

お米のイメージガール募集のチラシに、「色白でスタイルの良い方募集」といった表現を見つけると、

「女は色白でないといけないのか、差別だ」
「色白でない女性を見下している」

などと批判する。

うどんを食べる習慣を広めるために販売する予定だった「うどんかるた」の中に、「強いコシ 色白太目 まるで妻」という句を見つけると、

「妻をバカにしている」

としてクレームをつける。

どれも実際にあったクレームだ。いずれも自分なりの正義感に駆られた行動なのだろうが、あまりに一方的で、相手の立場に対する想像力が欠けている。

忙しい勤務の合間に制服を着替える暇もなく食事をとっていることに対する理解があってもよいだろう。米だから色白を求めただけで、べつに女性は色白でないといけないなどと言っていないし、別の商品だったら小麦色の肌をした女性を募集したかもしれない。ユーモア精神で妻を引き合いに出したことに対して、「やあね」と笑う妻はたくさんいても、これで傷つく妻がどれほどいるだろうか。

口癖は「絶対」「あり得ない」

この種のクレームに多くの団体は非常に神経質になっているが、こうしたタイプが社内にいると、ほんとうに厄介なことになる。

会議でどんな提案が出ても、独りよがりの正義感を発揮し、

「こういうクレームが予想されますし、ここは慎重になった方がいいんじゃないでしょうか」

などと言い出す。そうなるとだれも強く反論しにくい。だが、これではアイデアの芽がつぎつぎに潰されてしまう。

このような独りよがりの正義感を振りかざすタイプの口癖に、「絶対」とか「あり得ない」といった言い回しがある。人の意見を聞いて、自分の考えと違うと思うと、

「それは絶対に違います」
「それは絶対におかしいです」
「そんなのあり得ません」

などと反論する。自分の視点を絶対視し、相手の考えを全否定するのだ。

ふつうは、自分と違う意見が出ると、

「それはちょっと違うんじゃないかな」

と思っても、

「そんな見方もあるんだな」

と、相手の視点にも想像力を働かせようとする。

だが、このタイプは、自分の視点から抜け出すことができないため、相手の視点に立った場合にどのように見えているかを想像することができないのである。それぞれに理屈があるといった視点に立てず、相手が間違っていると一方的に決めつける。

このタイプと議論になると、まったく聴く耳をもたないため、議論が噛み合わない。相手の理屈を理解しようといった姿勢がないため、意見が違うと、「絶対におかしい」「あり得ない」ということになり、ときに「許せない」と非常に攻撃的になることもある。