仕事ができる人の話し方や習慣を真似すれば、仕事ができるようになるのか。心理学者の榎本博明さんは「ほんとうにできる人は、人の真似をしない。自分流を編み出す試行錯誤ができるということが、仕事ができる人になる条件といってもよいのではないか」という――。

※本稿は、榎本博明『【新装版】薄っぺらいのに自信満々な人』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

自信を持つビジネスマン
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「できる人」の記事を読んでいる時点で「残念な人」予備軍

できる人に見られたい。それはだれでも一緒だろう。では、できる人に見られるためにどうするか。そこに、ほんとうに仕事ができる人と「仕事ができる風」な人の分かれ道がある。

「できる人のカバンの中身」
「成功を呼び込む必須アイテム」
「稼げる人が持つ財布」

ウェブや雑誌でよく見かける特集だが、このようなタイトルに惹かれ、読んでみようと思う人。その時点で、ほんとうに仕事ができる人に成長していく路線から外れてしまう。

ビジネスで活躍している人と同じ小道具を持ったからといって、仕事ができるようになるわけがない。たくさん稼いでいる人と同じような財布を持ったからといって、稼げるようになるわけがない。

そんなことは小学生でもわかることだ。

それなのに、こうした本のタイトルやウェブ記事に惹きつけられて読んでいる時点で、残念な人の予備軍になっている。

このようなタイトルが気になるということは、「仕事ができる風」な人をめざしている証拠と言える。それだけで、もう仕事ができる人になれない資質十分と言える。即刻、心の構えを修正する必要があるだろう。

手帳術やノート術よりも真似るべきこと

持ち物を真似するというのは確かに浅はかなことだが、思考の整理術みたいなものなら役立つはずと思うかもしれない。

「仕事ができる人の手帳術」
「ビジネスを成功に導くノート術」
「できる人のメモ術の極意」
「できる人の話し方」

これらもウェブや雑誌の特集によくありがちなタイトルだ。小道具を真似ようとするよりははるかにマシかもしれないし、参考になる点もあるかもしれない。だが、メモのとり方や話し方で仕事ができるようになるわけではない。

その仕事のできる人の思考法のクセが、そのようなメモのとり方を編み出したのであって、メモのとり方が思考法を生み出したのではない。メモのとり方は結果であって原因ではない。

だから、メモの仕方を真似したって、同じような頭の使い方ができるようになるものではない。

仕事ができる人にもいろんな手帳の使い方があり、人によってさまざまだ。几帳面にメモしてうまくいく人もいれば、ほとんどメモなどしないのにうまくいく人もいる。スッキリした図解が好きな人もいれば、グチャグチャ書き込むのが好きな人もいる。

手帳とかノートのとり方よりも、もっと真似るべき重要なことがあるはずだ。教養を身につけたり、仕事に必要な知識を仕入れたり、発想力を高めるためにいろんな本を読んだりといった日頃の地道な努力を飛ばして、魔法のテクニックに頼ろうという安易な姿勢が問題なのだ。