防衛費増額分が米国の国防産業に?

米国やEU諸国が製造業を軽視しオフショアリングを進めた結果、精密加工の現場を失ってしまった。いくら「脳(AI)」が優秀でも、それを載せて動くドローンや艦艇というリアルな「ボディ」がなければ戦えない。そういう高度な工業製品のサプライチェーンを残す数少ない国の一つが日本というわけだ。

これまで日本の防衛産業、例えば三菱重工業や三菱電機等は、防衛部門の稼ぎは売り上げ全体の1割以下という副業程度でしかなく、しかも競争力に疑問符がつく状態。世界情勢が一変し、需要増に加速がつくこの期に及んで明確な展望を見いだせずにいる。日本の防衛産業の再編も待ったなしである。

米トランプ政権は各国に防衛費の増額を突き付けているが、その増額分がすべて米国の国防産業に持っていかれ、血税が国内の企業にまったく還元されない――そんな事態を招くべきではない。アンドゥリル社の100%国産ドローン一つ取っても、本来なら日本の企業が行うべき案件である。

日の出時の軍事作戦
写真=iStock.com/guvendemir
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民生技術と軍事技術は分けられない

この周回遅れの状態を、ぜひとも一変させなければならない。防衛装備品を「高く売りつけられるだけ」という従来の対米関係を終わらせ、日本の優れた製造技術を切り札として、こうした先鋭的な企業と対等なディールを行うべきだ。

体制づくりは始まったばかりだ。数年ほど前から経産省などが主導して日本版インキュテル、つまり防衛テクノロジーのベンチャー等を支援する国家ファンドの立ち上げが政府内部で議論されてきた。防衛省も2024年10月に防衛イノベーション科学技術研究所を立ち上げた。高市政権下で間もなく発足する国家情報局にも安全保障と産業政策の連携強化の舵取りが期待されている。

民生技術と軍事技術を分けることが不可能となった今、日本を「防衛技術供給拠点」へと再定義すること。この冷徹なリアリズムに基づいた戦略こそが、21世紀後半の日本の立ち位置を決定し、日本経済の不可欠性と自律性を高め、私たちの民主主義を守る手段となるだろう。

(取材・構成=西川修一)
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