検察という組織独特の「歪み」
おそらく検察には元々「容疑者を起訴して有罪にするのが仕事で、被害者対応は本来の仕事ではない」という意識があり、それが今回表れているということではないか。刑法自体が容疑者と国家権力の二者関係を基本にしており、それに対する批判から、被害者を保護しその権利を保障する制度が整えられてきたが、検察幹部は被害者支援の重要性をどれだけ理解しているのだろうか。
また北川被告の起訴が、検察組織内の性暴力やハラスメントの再発防止になるわけではない。犯罪の追及と職場環境の安全は、別次元の話だ。起訴したからといって、その代用はできない。問題はむしろ、公訴権を独占しているのに、このような対応しかせず人権感覚の欠けた組織に、まともな法の執行ができるのかということだ。
トップの検事総長は女性なのに…
そもそも組織のトップが部下に性暴行をした容疑で逮捕されるという、福井県や自衛隊、フジテレビでも起きていない重大犯罪。検察だけ特別扱いで、何も自浄努力をしなくていい合理的理由は存在しない。第三者委員会を作り、外部の目で検察の組織風土をチェックすべきで、もし自らそれができないなら、国会の場で議論し、今後何らかの検察監察システムを導入する必要があるのではないか。
現在検察組織を束ねる検事総長は、初の女性トップの畝本直美氏だ。女性がトップになったからといって、男性ができなかったことをするよう求めるのは、女性にばかり男性以上の成果を期待する逆差別という側面はある。しかし現実に、性暴力被害者には女性が圧倒的に多い。被害を受けた女性職員に寄りそわず、辞職や自死を口にするところまで追い込んでいくのが、初の女性トップのいる組織であるという状況は、ジェンダー平等最底辺国の権力機構の現在位置を映し出していて、日本の不幸を象徴している。


