フジテレビより自浄作用がない

ひかり氏は大きなショックを受けて復職できなくなったが、その後も検察幹部はずっと、体調を崩したひかり氏の様子を聞き取りすることもなく、放置。ひかり氏の求めに応じて2025年11月にようやく面談した時も、ひかり氏にとって、もはや「恐怖の象徴」となっていた検察庁での面談に固執。結局、別の場所で面談は行われたが、「主治医や支援者の先輩検事と連携し、自分の病状や心情に配慮した支援体制を作ってほしい」とひかり氏が要望したのに対して、その後もなしのつぶてだという。

フジテレビの女性アナウンサーが中居正広氏に性暴力を受けた後、被害女性のサポートを女性幹部1人に丸投げしたまま、上層部が放置していたことが批判されたが、それを上回るひどい対応だ。

大阪中之島合同庁舎の大阪地検(右)、大阪市福島区
撮影=プレジデントオンライン編集部
大阪地方検察庁と大阪高等検察庁が入る中之島合同庁舎(右)、大阪市福島区、2025年

「命にかかわる」ほど追い詰められた

ひかり氏は検察から北川事件の保秘を求められていたため、検察内部で相談できず、苦しい思いをしてきた。その中で唯一、許可をもらって話し相手になってくれていた支援者の先輩検事も、近く異動することとなった。一方で、公益通報の形でひかり氏が記者会見をした後、外部発信しないよう口止めするメールを送ってきた検察幹部の上司が、大阪地検トップに就任。ひかり氏の孤立感が深まり、PTSDの症状がさらにひどくなっている。「対峙が長引くほど精神状態が悪化し、命にかかわる」と主治医が懸念するところまで追い詰められているという。

陸上自衛隊の性暴力事件の場合

同じ官庁の防衛省では、陸上自衛隊で性暴力を受けたと五ノ井氏が2022年6月に告発した後、11月にハラスメント防止対策有識者会議を設立。会合を複数回開く中で、五ノ井氏も招いて話を聞いている。また2022年9月から11月、全隊員を対象にハラスメントの特別防衛監察を行い、2023年12月、免職2人を含む207件245人を処分したと発表。五ノ井氏が国と元自衛官5人に対し損害賠償を求めた民事訴訟でも、国が安全配慮義務違反を認め、五ノ井氏に賠償金を支払うことで2026年1月、和解が成立したところだ。

こうした他省庁の姿勢に比べ、検察庁には、性暴力被害者であるひかり氏に寄りそう姿勢が見えない。職員であれば、被害者として意見や要望を言う権利は圧迫され、検察幹部の意向に従うしかないのか。それが正当化されるなら、検察職員には人権がないことになる。検察のそうした姿勢は、一般の被害者への対応にも容易にスライドする危険がある。