仕事を長く元気に続けるために重要な能力は何か。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の面談を行っている産業医の武神健之さんは「助けてもらう力は欠かせない。真面目な人、優しい人ほど自ら壁を作ってしまっているので、職場での振る舞いを見直してみてほしい」という――。
落ち込んだ若い男
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「助けてもらう力」が仕事人生を変える

こんにちは。産業医の武神です。産業医面談を続けて15年以上になります。「先生のおかげで……」と、社員や人事から言われることは職業上の喜びです。反面、何年経っても、産業医の経験値が上がっても、自分にはどうしようもないと感じてしまうことがあります。

それは、メンタル不調になった社員に対する「戻ってきてほしい」または「もう戻ってこなくていい」という部署メンバーたちの正直な“気持ち”です。もちろん、企業には安全配慮義務がありますから、後者のように思われているからといって、即退職とはなりません。しかし、どちらの印象の人の方が復職後うまくいく確率が高いかは容易に想像できます。

最近になってようやく、この違いはどこからくるのか気がつきました。それは、部署の雰囲気でも部署長の性格でもなく、当事者本人の非認知能力としての「助けてもらう力」に関係していると思います。周囲との関係において、困ったときに自然と手を差し伸べてもらえる状態を育てられていることが重要なのです。この「助けてもらう力」は困ったときのみならず、人との関わりを通じて成果を出し、成長するためにも欠かせない能力だと言えるでしょう。

「会話上手な人」になる必要はない

今日はそんな「助けてもらう力」について、助けてもらえる人と、なかなか助けてもらえない人の違いについて、産業医としての面談経験から、特に大きいと感じるポイントを3つお話ししたいと思います。

1. 助けてもらえる人は「普段の関係」を大切にしている――「おはよう」という、小さな心の握手

助けてもらえる人というと、コミュニケーション能力が高く、誰とでも仲良くできる人を想像するかもしれません。しかし実際には、もっと基本的なところに違いがあります。それは、普段から職場で穏やかな人間関係を保っていることです。

朝会ったら「おはようございます」と言う。何かしてもらったら「ありがとうございます」と伝える。約束の時間(期限)を守る。小さな報告や連絡を忘れない――こうしたことは、とても当たり前に見えるかもしれません。けれども職場では、この「当たり前」が意外とできていないこともあります。