10代の脳は衝動を制御する能力が弱い
10代とは、「よい選択をする」ことが脳の発達的に難しい時期なのだ。若いときは、パーティーに参加するためにベッドを抜け出すものだが、年をとってくると、ベッドで寝るためにパーティーを抜け出す。
思春期という時期は、新しい刺激を求める脳の部分(「パーティーに行こうぜ! 学校のことなんか忘れちまおう!」)と、衝動を制御する脳の部分(「今夜は勉強しないと本当にやばい」)のあいだの闘争である、ということをスタインバーグは同書で明らかにしている。
この二つの脳の部分の闘争は、車のアクセルペダルとブレーキペダルの心理学的な等価物だと考えるとわかりやすいだろう。10代の頃は、私たちの脳はアクセルペダルを踏み込みがちで、奇抜で刺激的な経験を求めてしまう。衝動を制御する能力(ブレーキのメカニズム)は、もっと後で発達する。
スタンフォード大学の生物学者・神経学者のロバート・M・サポルスキーは、『善と悪の生物学――何がヒトを動かしているのか(上・下)』のなかで、「未熟な前頭葉ではこのようなドーパミン系に対抗しても勝ち目はない」と書いている。
「どうしてお姉ちゃんのようになれないの?」
ここから育児について重要な示唆が導かれる。すなわち、10代の子どもが自己調整のやり方を身につけられるように、親をはじめ周囲が支援することの重要性である。
思春期は、自分の感情や行動を自制することが難しい時期なのだ。その傾向は女の子と比べて、男の子の方がはるかに強い。なぜなら、男の子は、アクセルの力がより強く、ブレーキの力がより弱いからだ。
衝動を制御し、物事を計画し、未来について思考することに関連づけられる脳の部分は、ほとんどが前頭前野にある。この脳の部分は、「脳のCEO」とも呼ばれることがある。女の子の方が男の子よりも、約2年も早く成熟する。
たとえば、小脳は、女の子は11歳で十分な大きさに達するが、男の子は15歳になるまで十分な大きさにはならない。神経科学者のギョクチェン・アキュレクによると、小脳は、様々な機能を有しており、その一つとして「感情能力、認知能力、制御能力を調節する役割を担っている」と指摘する。なるほど、アキュレク博士。でも私はそのことを知っていますよ。なんたって、息子が3人いますから。
これらの知見は、注意力と自己制御にかんする調査結果とも整合性がある。思春期半ばでもっとも大きな性差が生じるのは、海馬(注意と社会的認知に関連づけられる脳の部分)が、いくぶんかは第二次性徴の影響を受けるせいでもあるのだろう。
だから、本当に多くの10代の男の子がお母さんからいわれる小言(「どうしてお姉ちゃんのようになれないの?」)への正しい返答は、「だって、母さん、皮質と皮質下の灰白質には、性差によって異なる発達経路があるからだよ」といった感じになるだろうか(そして彼らはテレビゲームに戻るわけだ)。
