細田守監督『果てしなきスカーレット』は、アニメ界のアカデミー賞とされるアニー賞にノミネートされたものの、日本での興行成績は振るわなかった。元関西テレビ社員で、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「制作に入った日テレは不振の要因として、SNSやネットの『ネガティブキャンペーン』をあげた。この発言こそ、もっとも細田監督を冒涜しているのではないか」という――。
2025年9月4日、イタリア・ヴェネツィアで開催された第82回ヴェネツィア国際映画祭にて、日本俳優の岡田将生、芦田愛菜、そして日本映画監督の細田守が『果てしなきスカーレット』の上映会に登壇した。
写真=RICCARDO ANTIMIANI/EPA/時事通信フォト
ヴェネツィア国際映画祭にて『果てしなきスカーレット』の上映会に登壇した俳優の岡田将生さん、芦田愛菜さん、細田守監督

なぜ日テレの会見が「炎上」したのか

日本テレビの澤桂一取締役は、2月16日の同局の定例記者会見で映画「果てしなきスカーレット」(以下「果てスカ」)について、「大不振で終了しました」とした上で、次のように語った

ネガティブキャンペーンの波に飲み込まれてしまった。それによりライトユーザーを取り残してしまったなと思っております。

なるほど同作は、振るわなかった。公開直後こそランキング3位に入ったものの(興行通信社調べ)その後は伸びず、31日間での興行収入は5億8000万円だったと報じられている(「Smart FLASH」2026年2月19日配信記事より)。

なんでもかんでもSNSのせいにする。そんな態度は、上記の記事が指摘するように、「先の衆院選で落選した議員が『SNSのデマが敗因だった』と語る姿にも似ていて」、片腹痛い。いかにも「オールドメディア」らしいこの振る舞いは、既に「ネガティブキャンペーン」の的になっているようなので、わざわざ取り上げるに値しないのかもしれない。

成功を「自社の手柄」とする身勝手

しかし、実は、この澤桂一取締役の発言は、単なる他責にとどまらない。細田守監督や、その作品を根こそぎ冒涜する重大な問題を孕んでいるのである。それは何か。

その問題の前に、まずは、この発言が、いかに官僚主義というか、ご都合主義かを指摘しなければならない。ヒントは、澤氏の部下=日本テレビのプロデューサー・谷生俊美氏の発言にある。

谷生氏は、『果てスカ』の前作『竜とそばかすの姫』(2021年、以下「竜そば」)の宣伝について、「これ以上できないくらい宣伝した結果、宣伝があたりました(※1)」と振り返っている。「延べ視聴率」つまり、CMを入れた番組の視聴率の合計であるGRPが、過去作の『バケモノの子』(2015年)の5000GRPに対して、「竜そば」はその3倍の1万5000GRPを費やしたという。

参考文献
※1:「鼎談 齋藤優一郎×高橋望×谷生俊美 プロデューサーチームの果てしなき挑戦」日経エンタテインメント!編『スタジオ地図15周年「果てしなきスカーレット」で挑む世界』日経BP、2025年、50ページ