細田監督が描いてきた「インターネット」

まさにこの点が、『果てスカ』を、スタジオ地図と細田監督の作家性を、どう見るかの境目になるのではないか。そして、その境目を踏み外したのが、日テレの澤取締役による「ネガティブキャンペーンの波に飲み込まれてしまった」との発言ではないか。

日本テレビの澤桂一取締役
日本テレビの澤桂一取締役(プレスリリースより)

なぜなら、細田監督とスタジオ地図こそ、インターネットの世界を、それも、「肯定的に」描いてきたからである。細田監督は、前作『竜そば』の公開(2021年)にあたって、次のように述べていた。

インターネットは本人が思ってもいない別の側面も明らかにする。もう1人の自分と出会って変化が起き、現実の自分も強くなっていく――そんな効果もあると思うと、若い人がSNSやインターネットに求めるものの重要さが分かってきます。ただ批判するだけではなく、肯定的に“寄り添う”目線が必要ではないか。特にこのコロナ禍の、制限が多く抑圧された世の中には。(※4)

日テレ幹部の発言は「無神経すぎる」

細田監督が回顧する通り、彼は、「インターネットの世界を舞台に、継続的に映画を作っている世界でも数少ない監督の1人(※5)」である。『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)に始まり、『サマーウォーズ』(2009年)、そして『竜そば』と、「インターネットを肯定的に描いて(※6)」きたのが、細田監督でありスタジオ地図だった。

にもかかわらず、彼らの作品が「大不振」だった原因を、よりにもよって「ネガティブキャンペーンの波」だと言い募ったのだから、無理解どころか、侮辱にもほどがあるのではないか。

ひょっとすると、その発言をした日本テレビの澤桂一取締役は、『果てスカ』どころか『竜そば』を見ていなかったのではないか。そう疑わざるを得ないほど、彼のことばの無神経さが際立つ。

テレビ局がいくら「限界“超”突破」を目指した宣伝をしても、「大不振で終了」したのだから、もはや、そんな時代じゃない、と言えるのかもしれない。大量にCMを打って、番組でも露出させて、タイアップして、「お客様が『細田作品は面白い、新作も見てみたい! となる」幸福な関係は、もう終わったのかもしれない。

参考文献
※4:「スペシャルロングインタビュー 最新作『竜とそばかすの姫』その根底に流れるものとスタジオ地図の10年」日経エンタテインメント!編『スタジオ地図15周年「果てしなきスカーレット」で挑む世界』日経BP、2025年、181ページ
※5:上記注4に同じ。
※6:上記注4に同じ。