失敗は「ネガキャン」に責任転嫁

これを谷生氏は「限界突破」と称しており、その結果が『竜そば』の大ヒット(興行収入66億円)につながったとして、今回は、「限界“超”突破」を掲げた。昨年11月の公開にあたって、同月の4週間連続で「金曜ロードショー」で細田監督の過去作品を放送した。その意図を、次のように明かしている。

テレビメディアを見る人が減っていくなかでの宣伝なので、局横断で番組露出したり、タイアップCMも増やし、4週連続放送で過去作品を最大活用するのが鍵だと思います。お客様が「細田作品は面白い、新作も見てみたい!」となることを信じてやり切ろうと思います。そんな過去最大規模の量と質で、公開を迎えます。(※2)

「信じてやり切ろうと」「過去最大規模の質と量」を費やした「限界“超”突破」の結果が、「大不振で終了」だったのである。成功したとき(『竜そば』)の手柄は「宣伝があたりました」として、「テレビメディア」の威力を自画自賛する。失敗したとき(『果てスカ』)の要因は、「ネガティブキャンペーンの波」だと責任転嫁する。これをダブルスタンダードと言わずして、何が当てはまるだろうか。

2016年10月25日、第29回東京国際映画祭オープニングセレモニーに登壇した細田守監督
東京国際映画祭オープニングセレモニーに登壇した細田守監督(写真=Dick Thomas Johnson/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

アニー賞「インディペンデント」部門のワケ

加えて、その谷生氏が「果てしなき展開」と作品タイトルに引っ掛けて胸を張ったように、日本以外の、世界に向けた配給を、ハリウッドのメジャースタジオであるソニー・ピクチャーズが担った。

同社は、今回のアニー賞ノミネートにあたってのプレスリリースで、「これまでのスタジオ地図・細田守監督作品のイメージを覆す衝撃の最新作」と謳っている。また、同社から『果てスカ』の共同プロデューサーを務めた佐原沙知氏は「ハムレットをベースにした物語は、海外でも受け入れられやすいはず(※3)」と意気込んでいた。

惜しくも今回の受賞は逃したものの、と書きたいところではあるが、そもそもアカデミー賞にはノミネートされておらず、米国で公開されたものの、興行成績の行末は見えない。ただ、ここで注目すべきは今回、アニー賞の「インディペンデント」部門にノミネートされた点である。同部門は、独立系のアニメーターや小規模スタジオ、米国外の作品を正当に評価するために2015年に新設されたものだ。

ソニー・ピクチャーズという超大手の配給にもかかわらず、『果てスカ』は、あくまでも大手ではない「スタジオ地図」という独自性を強みとする制作会社が手がけたところを評価されたのではないか。「これまでのスタジオ地図・細田守監督作品のイメージ」をもってノミネートされたのではないか。

参考文献
※2:「鼎談 齋藤優一郎×高橋望×谷生俊美 プロデューサーチームの果てしなき挑戦」日経エンタテインメント!編『スタジオ地図15周年「果てしなきスカーレット」で挑む世界』日経BP、2025年、50ページ
※3:日経エンタテインメント!編『スタジオ地図15周年「果てしなきスカーレット」で挑む世界』日経BP、2025年、125ページ