新型コロナウイルスは「進化したウイルス」
スパイクタンパク質の構造をくわしく見てみましょう。
先端から3分の1程度が「S1サブユニット」、残りの3分の2が「S2サブユニット」です。S1サブユニットの先端には「受容体結合ドメイン(RBD)」があり、ここがヒトの細胞膜にある「ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)受容体」に結合します。
また、S2サブユニットは、ウイルスと人間の細胞膜を融合させる役割を担っています。ACE2とは、2000年に発見された酵素タンパク質で、おもに血圧調節や臓器保護に関与しています。そのACE2を受け止めるのがACE2受容体です。
ACE2受容体は、喉や肺のほとんどの細胞表面に存在し、新型コロナウイルスにとっての呼吸器系の「入り口」となっています。
重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルス(SARS-COV)も、新型コロナウイルスと同じようにACE2受容体に結合しますが、新型コロナウイルスの結合力はこれよりも2~4倍も強いとされています。この様子を見る限り、新型コロナウイルスは、まさに「進化したウイルス」といえるでしょう。
新型コロナは「A抗原が大好き」
新型コロナウイルスがRBDでACE2受容体と強力に結合すると、次の段階が始まります。呼吸器細胞の表面に大量にある「TMPRSS2」というタンパク質分解酵素を利用し、S2サブユニットの特定部位を切断するのです。
するとそこから、ウイルス内部にある疎水性アミノ酸(水を嫌う性質のアミノ酸)が露出します。これらのアミノ酸は、もっとも近くにある人間の細胞膜の中へと速やかに潜り込みます。
そして、長く伸びていたスパイクタンパク質が折り畳まれ、ウイルスと細胞膜がジッパーを閉じるように融合するのです。これが新型コロナウイルス感染の瞬間です。このような経緯で感染が起こるのですが、じつはこの時点で、血液型による違いが見られます。
B型やO型の人がもつ抗A抗体が、新型コロナウイルスのRBDとACE2受容体の結合を阻害している可能性があるのです。
一方、A型の人が感染しやすい理由も分子レベルで解明されています。研究によると、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質にあるS1サブユニットは、A型赤血球に強く結合することがわかりました。
なお、B型には中程度、O型には弱い結合しか示しません。さらに、ACE2受容体そのものが、血液型抗原を含む糖タンパク質であることが確認されています。
つまり、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は「A抗原が大好き」なのです。そのため、A抗原をもつA型(またはAB型)の人は、ウイルスにとって格好の「標的」となってしまう、というわけです。
これらを併せて考えると、やはり「新型コロナウイルスにはO型が強く、A抗原のあるA型(とAB型)が弱い」といえるのです。



