なぜ学校に不要物を持ってきてはいけないのか
本稿の最後に「学校にシール帳を持ってくること」について意見を述べておきます。
学校にシール帳を持ってくることを禁止しているかは地域や学校によって異なるでしょうが、基本的に学校には「不要物を持ってこない」というルールが設定されています。ここでは、そのルールが設定されている理由の一部を述べておきましょう。
シール交換関連で起こりやすいトラブルが紛失です。事実、私の働く地域の学校でも、子どもが家から持ってきたシール帳が無くなるという事案がありました。子どもが落としたという場合もあるでしょうが、他の子どもが盗ってしまった可能性も考えられます。思慮分別がつかない未熟な発達段階の子どもほど、自らの欲求に振り回され、行動をコントロールできないことがあり得るのです。
仮に誰かがシール帳を盗ったのだとしたら、傷つくのは誰でしょうか? きっと多くの人が「盗まれた子ども」だと考えるでしょう。もちろん、それは間違いありません。盗まれたという事実に傷つくだけでなく、誰かわからないけど「盗んだ人が身近にいる」と考えながらの学校生活になるのは気分が良いものではありませんからね。
子どもに「罪を作らせない」
一方で、「盗んでしまった子ども」も長い目で見れば傷つくことになります。盗んだ瞬間は「欲しい物が手に入った高揚感」があるかもしれませんが、それは一時のものです。盗んだ物の魅力は徐々に薄れ、残るのは「この程度の物のために盗みをした自分」だけです。決して「盗みをしていない自分」に巻き戻ることはなく、盗みをした自分を心のどこかに感じながら生きていくことになります。盗んだことを忘れたかのように生活していても、大人になって罪悪感を覚える出来事があれば思い出されたり、シャワーを浴びているときや寝る前にボーっとしているときにふと頭に浮かんだりするのです。消化されていない過去の苦い出来事が何気ない瞬間に回顧される……という体験には身に覚えがある人もいるのではないでしょうか。
学校には「罪を作らせない」という言葉があります。未熟な子どもたちがたくさんいる学校という場において、不要物、それも手に入りにくい希少なものを持ってくることは、それだけで「罪を作らせるリスク」が高まります。子どもが「罪を作ってしまう状況そのもの」をできるだけ少なくする(=不要物を持ってこないというルールを作る)ことで、子どもの人生に不要な後ろめたさを生まないことが大切なのです。学校に「不要物を持ってこない」というルールがあるなら、家庭はその意味をよく理解して子どもの成熟のために協力し合えると良いでしょう。


