only oneに偏り過ぎない

【事例:一時的に不登校になった女子児童】

小学校5年生の女子児童。シール交換のとき、女子児童はボンドロばかりを要求し、周りの子どもは断り切れず交換していた。しかし、それによって女子児童は周囲から敬遠されるようになり、学校へ行きにくくなって数日登校が困難になった。

シール交換のトラブルでは、子どもの要求が度を超えていることがあるようです。ひどい場合は「くれないと友だちやめるぞ」と脅して交換を迫るなど。学校現場に20年近くいますが、小学生になっても「only one:唯一の自分」という感覚に極端に偏り、相手を自分の一部のように扱う子どもが増えました。「マウントをとる」などの権力的な表現を好んで使用する子どもや、「やりたくないからしなくていい」など自らの快不快のみを判断基準にしている子どもを見るようになりました。

この未熟さのしくみを詳しく説明するには紙幅が足りませんが、幼いころからの親をはじめとした他者と気持ちをすり合わせることなく、自分の欲求を叶え続けられていれば「only one:唯一の自分」のみに偏ったマインドから脱け出すのが遅れてしまいます。相手の立場を考えながらシール交換を行うためには「only one:唯一の自分」だけでなく、「one of them:大勢の中の一人」という感覚も育てておくことが求められるわけです。精神的に安定している人ほど、この二つがちょうどよいバランスで釣り合っているのです。

ランドセルを背負ったまま、階段で泣いている女の子
写真=iStock.com/Hakase_
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交渉の場で求められる「すり合わせる力」

一方で、断り切れなかったとはいえ、いったんは交換を了承したのに後になって女子児童を敬遠した子どもたちにも未熟なところはあるでしょう。シール交換の場に臨むときには互いの気持ちを「すり合わせる」ことになるので、当然、自分の気持ちや意見を伝えられることが求められます。それらが言えずに不満な交換になったとしても、後になって別の形で表現する(事例のように敬遠する)のは「マナー違反」となります。

子どもがシール交換での不満を訴えたら、大人たちはその不満に共感を示して終わるのではなく、シール交換では「気持ちをすり合わせる力」が前提になるという現実も話し合っておくと良いでしょう。これはシール交換の話題ではありますが、あらゆる対人関係に必要な事柄を示唆することにもなります。