石破政権を沈めた「財務省路線」の功罪

【岸】彼らがわかっていないのは、現実です。現実的に物価高対策には2通りあります。一つは経済学の教えに基づいて財政出動を抑制し、物価上昇を抑えるアプローチです。もう一つは物価の上昇によって苦しんでいる消費者の所得を減税や補助金で増やし、物価上昇への耐性を高めるというアプローチです。

批判する人は、前者の物価を抑えるアプローチしか正しくないと言います。でも、これをやるとどうなるか。石破政権が国政選挙で連敗した結果になるわけです。

民意が正しいかどうかはともかく、国民は物価高対策で金をくれと意思表示したわけです。ガソリンの暫定税率廃止とか、消費税の軽減税率ゼロとか、取得税の取得控除を下げろとか、わかりやすく言うと、手取りの金が増えるようにしろと言っているのです。それにもかかわらず、石破政権は、財務省路線に乗って前者のアプローチを選び、結果的に財政出動をけちったから負けたわけですよ。

机上の議論で正しい政策だからといって、それが現実の世界で国民に受け入れられるか、政治的に正しいかは別問題です。2回の国政選挙を通じて示された民意を踏まえると、高市政権が、積極財政を批判する評論家たちを無視して昨年より4兆円多い補正予算を措置したことは、政治的には正しいと思います。

増税のコンセプト
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「金利2%上昇」で大騒ぎする必要がない理由

【岸】ちなみに、評論家や学者は積極財政で為替、国債、株価のトリプル安が進むと騒いでいますが、懸念があると問題提起したい気持ちは分かるものの、この手の「狼が来るぞ」的な発言はそろそろいい加減にしてほしいです。

例えば、国債の金利が2パーセント近くまで上昇したことを受け、大変だ! と大騒ぎする人が多いですが、財政の観点から大事なのは、名目金利が名目成長率よりも低いこと。

それが維持されれば財政収支は悪くなりません。2024年の名目成長率は3.7パーセントでしたから、まだ大騒ぎする程ではありません。

もちろん、金利が上がると住宅ローンの返済は増え、政府の借金の利払いも増えますが、天地ひっくり返るような大変なことがすぐ起きることはないです。

さらに言えば、財政支出し過ぎだと言われますが、では前の政権はどうだったかと言うと、緊縮財政だったとも言えます。現在、物価が上がっていますから、名目GDPが当然増えています。借金や毎年の財政赤字は取り敢えず置いておいて、例えば財政赤字(一般政府の歳入マイナス歳出)のGDP比を見ますと、2024年度の日本の数字はG7の中で一番小さい。