負のスパイラルに陥っている
ここで、農林水産省のデータを見てみよう。「米をめぐる状況について」(農産局/2024年11月5日)によると、コメ農家の97%を占める10ヘクタール未満の規模では、過去4年間(2019~2022年)、必要経費などを差し引いた年間所得が200万円を下回っている。ポイントは、コメ農家ひとりあたり200万円ではなく、「経営体数」の金額ということ。家族でコメ作りをしていたら、200万円をその人数で分配することになる。
また、同資料によるとコメ農家の数は2015年から2020年の5年間で約25%減少しており、「稲作では特に高齢化が進んでおり60歳代以上が約9割を占める」「7割の経営体で後継者が確保されていない」という記述もある。
コメ農家は儲からないから、後継ぎがいない。後継ぎがいないから、コメ農家が減るという負のスパイラルに陥っていたのだ。
「今のコメの価格が、適正価格だと思います。でも、いろんなものに左右されるから、いつまで続くかわからないでしょう。自分でコメを売るのは必須だと思いますね」
コメ作りを続けるために、関さんは自社販売に舵を切らざるを得なかった。この決断は、結果的に自信を深めることにつながった。関農園では減農薬のコメが5キロで8750円、農薬と化学肥料不使用のコメは5キロで1万5000円する。この価格でも毎年完売するほどの人気を集めているのだ。
これで経営が安定すると同時に、関農園の持続可能性を高めた。4人の子どもの話題になると、関さんは頬を緩める。
「僕は子どもの時、親が農家ってめっちゃ恥ずかしかったから、そういう気持ちないの? って聞くと、ぜんぜんないって言うんです。後を継ぎたいと言ったりもしてくるんで、それはやっぱり嬉しいですね」
コメ作りの姿勢が、元DJにも届いた
関さんの影響を受けているのは、子どもたちだけではない。
「スノーボードをやっている時、チームの先輩たちから学んだのは『自分に自信を持って、全開でやらなきゃダサい』ということ。だから農業も全開でやるし、それをアピールしてきました。そうしたら最近、僕の周りで同世代とか若い農家の人がすごく増えてきたんですよ」
同じ南魚沼で240年以上にわたってコメを作ってきたこまがた農園の10代目、駒形宏伸さんも、そのひとりだ。世界一のDJを決める国際大会で優勝経験を持つ元DJの駒形さんは、コメ作りに本腰を入れると決めた時、関さんに指導を仰いだ。その後、国内最大級コメの食味コンテスト「第17回お米日本一コンテスト」で最高金賞を受賞している。
「関智晴はコメづくりの師匠です。稲作を誰よりも深く理解し、情熱を持って向き合う姿に常に刺激を受けています。ぼかし肥料や栽培技術はもちろん、商品づくりやブランディングにいたるまで多くを学んできました。その教えが私の農業の土台となっています」

