「未熟なのに甘い枝豆」がヒントに
ここからは詳しく書くことができないが、関さんはネットで検索し、専門書を読み漁り、自問自答を繰り返すうちに、「日照時間」にヒントを得た。そして、関農園の田んぼでいくつか条件を変えて実験することで、「味度」をコントロールできると発見する。
関さんはさらに、最終審査の官能審査に狙いを定めた。官能審査とは「実際に食べたときのおいしさ」。いかに審査員の舌にインパクトを残すのか、関さんは24時間、寝ている時にも夢を見るほど考え続けた。するとある日、自宅で枝豆を食べている時にふと「枝豆って甘いよな」と感じる。
枝豆は、大豆が熟す前の「緑」の状態で収穫したものだ。フルーツは熟したら柔らかく、甘くなるのに、枝豆はなぜ未熟な状態のほうが柔らかくて、甘いのだろう? この疑問から、植物について怒涛のリサーチが始まる。その結果、収穫のタイミングによって「うま味」を増す方法がわかった。
さらに、コメの「香り」と「うま味」を高めるために改善を重ねたのが、父の代から開発している肥料。「本当にきれいな香りと旨みをコメにのせるにはどうしたらいいか」という視点で「動物性アミノ酸」が不可欠という結論になり、日本料理の出汁をイメージして、米ぬか、魚の粉、こんぶ、カニ殻を使った「ぼかし肥料」を作った。もともとアミノ酸の宝庫だった関農園の田んぼの土にこの肥料を加えることで、味と香りが変化した。
「うちの田んぼって、ミジンコとかイトミミズがすごくたくさんいるんです。そのエサになるような目に見えないレベルの菌や微生物もめちゃくちゃいると思うんですよ。これらの菌や微生物が産卵したり、排せつしたり、動きまわることで、柔らかく栄養豊富な土ができる。それがやがてうちの田んぼのなかで死んで、分解される。この生命の循環が一番良質なアミノ酸だと考えています」
前人未到「日本一のコメ農家」の誕生
2012年にスタートした「味度」と「うま味」の攻略に費やした期間は、2年。満を持して迎えた2014年、関さんは「第16回 米・食味分析鑑定コンクール」で金賞を受賞する。
ここから、「日本一」への歩みが始まった。同コンクールではその後、6年連続金賞に輝く。
それだけではない。コメの総合メーカー、東洋ライスが2015年にスタートした「世界最高米」の認定は、「米・食味分析鑑定コンクール」の金賞受賞者だけを対象にしたもので、毎年5、6人だけが認定される。関さんは2017年から4年連続で、この称号を得た。米・食味分析鑑定コンクールで6年連続金賞、世界最高米4年連続認定は前人未到。関さんは自他共に認める「日本一のコメ農家」になった。
日本一を目指す過程で、コメの売り方も変えた。2020年に関農園のオンラインショップを立ち上げ、父親の代では農協に卸していたコメを消費者に直接届ける道を選んだ。価格は、スーパーで買うコメより何倍も高い。それは、自分が作るコメへの自信であり、それだけの価値を認めてくれる人がいるはずだというチャレンジでもあったが、なにより、コメ農家としての危機感があった。
「これまで、米の価格は構造的に低く抑えられてきました。米を作るだけで安定した経営を成り立たせるのは、簡単なことではありません。これからの時代は、農家としてコメを作るだけでなく、自ら価値を伝え、届けるところまで担うことが求められていると思います」


