憂き世の苦しみが癒やされる
そして最終日、永平寺で最高位にある大禅師猊下から、ご戒名とお血脈、つまりお釈迦さまから達磨大師や道元禅師を経て自分まで、連綿と伝わる法系図をいただきます。それはもう清らかな儀式です。
「戒名」というと、亡くなった後でいただくものだと思われるかもしれませんが、私は常々、「それでは意味がありませんよ」と申し上げています。
なぜなら、ご戒名をいただくのは、
「その名に恥じぬ、みんなの手本となるように生きていきます」
という決意表明だからです。
実際、江戸時代までは「ご戒名は元気に生きているうちにいただく」のが当たり前でした。
この「授戒会」に参加された方は、みなさん感動されて、「もう雑な生き方はできません」とおっしゃいます。なかには、生涯に一度でいいにもかかわらず、三度、四度と、何度も受ける方もいるほどです。
「憂き世の苦しみが癒やされる」「日々の生活で身にしみついた汚れをさっぱり落とせる」といった効果が感じられるようで、気持ちが安らぐのかもしれません。
いずれにせよ「授戒会」は、長期休暇の使い方の一つとして、非常によいものだと思います。
「よりよく生きる」ための“誓い”を立てる
いい機会ですので、「三帰戒」「三聚浄戒」「十重禁戒」から成る「十六条戒」とはどんな戒めなのか、触れておきましょう。
[三帰戒]
一 お釈迦さまを拠りどころといたします
二 お釈迦さまが説いた法(教え)を大切にいたします
三 お釈迦さまが説いた法を実践し、守り継ぐ僧侶たちを大切にいたします
[三聚浄戒]
一 悪いことは一切しません
二 常に善行に励みます
三 世のため人のために尽くします
[十重禁戒]
一 ムダな殺生はいたしません
二 盗みを働きません
三 淫らな行ないはしません
四 噓をつきません
五 酒を売り買いしません
六 人の過ちを執拗に咎めません
七 自慢しません。人をけなすこともしません
八 物やお金などを施すことを惜しみません
九 怒りに囚われ、懺悔を受け入れないことはしません
十 仏法僧の三宝を謗りません
大事なのは、これらの約束事を自ら「誓う」こと。「禁を破ってはいけない」と縛らないところが、仏教のおおらかさにも通じるように思います。
(初公開日:2026年1月20日)


