若手を鍛え上げる“登竜門”だった
しかし、なぜ彼らはここまでショックを受けているのだろうか。
さきほども紹介したように創価班や牙城会の活動はボランティアで行われているため、これらの組織が解体されれば男子部員の負担が減ることは間違いないだろう。
外部から見れば、「会館警備の裏方グループ」がなくなっただけのように思える。しかし、教団内部におけるこの組織の持つ意味は非常に大きかったという。都内で活動し、かつて創価班に所属していた50代の男性は、その重要性を次のように解説する。
「創価班や牙城会は、『やる気のある若手信者の登竜門』でした。単なる整理誘導や警備を行うのではなく、徹底した“人材育成グループ”としての側面が強かったのです。正直に言えば、かつては厳しい上下関係やパワハラ的なノリもありました。集合時間に30秒でも遅刻すれば責任者から怒鳴られますし、なんなら3分前に着いても『遅い! なにをやってるんだ!』と理不尽に“指導”されることもありました。
ですが、そうした厳しい環境に身を置き、周囲に揉まれる経験を通じて、創価学会ならではの組織的な動き方や、強い団結力を身に付けていったのです。あの経験があったから今の自分がある、と思っている学会員はたくさんいるはずです」
つまり、ただ漠然と信仰を持つ「信者」を、選挙支援などで最前線に立ち、周囲を巻き込んでいく「活動家」へと鍛え上げるための重要な経路だったと言える。
また、そうした訓練を受けていくなかで、自分自身の「創価学会員としてのアイデンティティー」を形成していったと考えられる。だからこそ、彼らは人材グループの解体にショックを受けているのだ。
「組織票」を生み出すパワーが細っていく
そして、この育成システムが失われることの影響は、非常に大きい。なぜなら、信者を活動家にするシステムの解体は、そのまま選挙における支援活動の質の低下につながるからだ。
以前、創価学会の「組織票」に関する記事を書いたが、そのなかでも述べたように、創価学会の組織票が威力を発揮するためにはさまざまな要素が合致する必要がある。
応援する候補への信頼や、対立候補の人柄や欠点、地元組織の状況などが組み合わさることで、組織票は強い力を発揮できると筆者は考えている。その組織票の基盤となっているのが、当然ながら創価学会の組織力だ。
若手信者を育成するシステムの解体によって、人数の確保だけでなく「創価学会的な組織人としての振る舞い」が失われてしまう可能性はあるだろう。さきほどの50代男性の証言にもあったように、「3分前に到着しても怒鳴られる」ような緊張感が、組織票の強さを支えていた一つの要因ではないだろうか。
人材グループの解体によって、強固な「組織票」を生み出してきた根源的なパワーが、世代を追うごとに細っていくことは避けられないだろう。

