3000万円控除で、税金はいくら浮くのか

では、具体的にどのくらいの節税になるのでしょうか。モデルケースで試算してみましょう。

まず、税金を計算する基準となる譲渡所得。譲渡所得は、「相続した実家の売却価額−(取得費+譲渡費用)」で計算します。取得費とは、その不動産をもともと手に入れたときの購入代金や建築費用のことです。相続で取得した場合は、被相続人(この例では父)が取得した当時の金額を引き継ぎます。

ただし建物については、取得費から経年による価値の目減り分(減価償却相当額)を差し引く必要があります。もともと住まいとして使用していた木造住宅の場合、耐用年数は33年(法定耐用年数22年×1.5)です。昭和52年築であれば築49年となり、耐用年数を大幅に超過しているため、建物の取得費はほぼゼロに近くなります。

一方、土地には減価償却がないため、当時の購入価格がそのまま取得費になります。しかし50年近く前の売買契約書が残っていないケースも珍しくありません。

実額の取得費が不明な場合や、実額が極端に小さい場合には、売却価額の5%を「概算取得費」として使うことが認められています。

今回のケースでこの概算取得費を使って試算します。相続した実家を2500万円で売却したとします。その5%は125万円。また、仲介手数料や解体費等の譲渡費用を相場価格の250万円とすると、譲渡所得は次のとおりです。

2500万円−(125万円+250万円)=2125万円

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前述のとおり、不動産の所有期間によって税率が変わりますが、相続で取得した不動産は親の保有期間を引き継ぎます。そのため、多くのケースでは「長期譲渡所得(保有期間5年超)」に該当し、税率は所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%となります。

もし「空き家特例」を使わない場合、譲渡所得2125万円に20.315%をかけると、税額は約432万円になります。一方、特例の3000万円を適用すれば、課税譲渡所得はゼロ。税金もゼロ円です。特例を使えるかどうかで、実に約430万円の差がつくわけです。

とにもかくにも、家屋の建築時期をしっかり把握して、この特例を行使する権利があるかどうかを見極めることが重要です。

改めて数字を整理するとこうなります。

売却価額:2500万円
概算取得費(売却価額×5%):125万円
譲渡費用(仲介手数料・解体費等):250万円
譲渡所得(特例適用前):2125万円

課税譲渡所得:特例なし2125万円vs.特例あり0円
① 所得税・復興特別所得税(15.315%):同約325万円 vs.同0円
② 住民税(5%):同約106万円 vs.同0円
税負担合計(①+②):同約431万円 vs.同0円

特例をぬかりなく使えるか否かで、例えば、課税譲渡所得が1500万円なら約305万円、1000万円なら約203万円、500万円でも約102万円という大きな額の差を生むことになるのです。

この空き家特例の期限は、先に触れた概要の最後に書きましたが、「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9(2027)年12月31日まで」(延長の可能性あり)の限定ということも重要なポイントです。

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