フィードバックされ続けていると、質問力が育たない
私はこれまで、何年も部下にフィードバックをし続けてきました。そのなかで気づいたのは、「フィードバックを受けていると、メタ認知は促進されるが、メタ認知力そのものは育たない」ということです。
つまり、理解は深まっているが、「理解する力」は鍛えられていないのです。「あれ? この話、前にもしたよな」と思う場面が何度もありました。
そして、彼らが自問自答できるようにならない原因の一つは、私が答えや問いを与えすぎていることにあるのではないかと思い至ったのです。
もし彼らにメタ認知力が育っていれば、「自分はいつも答えをもらってばかりだな」「次は自分で考えられるようになりたい」と気づき、「どうすれば自分で答えを出せるようになりますか?」といった質問が出てくるはずです。
しかし、実際はそうならない。それは、常に「フィードバックされる側」にいるからです。私も意識して、答えを言わずに問いを投げかけるようにしていました。
しかし、相手が答えを出せないと、つい別の角度から質問を重ねてしまう――。そうして、どんどん「質問力が高いのは自分のほう」になってしまうのです。
結果として、部下は一時的に納得できても、「自分で問いを立てる力」が育たない。そう実感したとき、私は「フィードバックされる側から、する側に回ること」がメタ認知力を鍛える近道なのだと考えるようになりました。
自分を知りたければ、他者を知れ
フィードバックする側になると、相手を理解し、納得させるために、多くの質問を投げかけます。その過程で問いの精度が上がり、他者への洞察力も深まっていきます。
つまり、人にフィードバックする回数が多い人ほどメタ認知力が高まりやすいのです。フィードバックすることは他者を深く知ることにつながり、他者を知ることは自分を知ることにつながっていきます。なぜなら、他者の考えを深掘りしていくと、自分にはよく理解できない価値観と出会うからです。
他人の価値観や行動原理を理解しようとすると、「なぜ自分はそう感じないのか」「自分だったらどうするか」などと、自分の思考を照らし合わせることになります。
他人の悩みや迷いを聞くなかで、「自分はここでは悩まないな」「自分はむしろこう考える」――そんな「ズレ」の感覚が、自分の特性を浮き彫りにしてくれます。
また、他者の深い話を聞くほど、「自分の常識は案外狭かった」と気づかされることも増えていきます。海外に出て初めて日本の良さを理解できるように、他人の思考に触れることで、初めて自分を客観的に見られるようになります。
自己理解を深めたいなら、自己分析に閉じこもるよりも、他者に向き合い、他者を深掘りする経験を重ねるべきです。そしてその経験が、思考の柔軟性を生み出します。
『ゆるストイック』などのベストセラーで知られる起業家の佐藤航陽さんも、次のように語っています。
行動しない人間ほど偏見や固定観念が多い。やってみればすぐ分かることも、自分では動かないので思い込みが見直されることもない。不思議な話だけど、思考の柔軟性は行動量に依存してる。
出典:https://x.com/ka2aki86/status/947388902796488704
行動とは、他者を知り、自分の思い込みを見直すことでもあります。人と深く関わり、フィードバックを重ねることで、自分の固定観念の殻を破り、より柔軟な思考が身につくのです。

