病院でも一時ブームになった玄米菜食
それで、故郷の埼玉県川越市に病院を開設したときには、入院患者さんの朝食に、漢方粥という漢方薬の原料となる薬草を入れたお粥を出すようになりました。
さらにホリスティック医学を取り入れたときには、食事療法も始めました。専門家を呼んで食事指導をしてもらったりもしました。
そのころは、玄米菜食が注目を集めつつあり、食事に関心をもつ患者さんが徐々に増えていました。
私も、食事療法に取り組む患者さんの様子を観察したり、本を読んだりして、食と健康・病気との関係について、よく考えたものです。
がんの患者さんの中には西洋医学だけの治療では不安に思う方も多く、西洋医学以外の代替療法と言われる治療法を取り入れる方がいます。そういう人が最初に取り組もうとするのが食事療法です。
私の病院でも、一時、玄米菜食がブームになりました。私たちが食べている白米にする前の茶色っぽい米を玄米と言います。玄米を精米して白米にすると、多くの栄養素が失われるということで、玄米のまま柔らかく炊いて、それをよくかんで食べるわけです。
そして、肉食はよくないということで、極力動物性たんぱく質をとらないようにします。これが玄米菜食の基本です。
喜びや楽しみがあってこその健康食
玄米菜食で元気になった方はたくさんいます。
しかし、食事というのは毎日、それも三食ですから、簡単に変えられるものではありません。海外旅行に一週間も行っていれば日本食が恋しくなるのと同じです。
食べ慣れない玄米を毎日食べていると、うんざりしてしまう人も多いのです。しかし、がんを治すためには食べないといけない。
ついには食事の時間が苦痛になってきてしまうのです。
私も白米派なのでよくわかります。私の大好きな刺身は、玄米と一緒に食べる気にはなれません。
回診に行くと、玄米に飽きた入院患者の方は冴えない顔をしています。
「どうしたのですか? 具合が悪いのですか?」
「いえ、体調はいいのですが」
患者さんが口ごもります。
私は、彼の憂うつの原因を即座に察して、こう言います。
「今度の日曜日、町へ出て、ステーキかうなぎでも食べてきたら」
ぱっと患者さんの顔が明るくなります。
「いいんですか」
私はにこっと笑って病室を出ます。
日曜日、患者さんは意気揚々と町へ出てきます。エネルギーにあふれています。

