「条例」で状況が一変し、追加費用を計上
だが、2021年7月、死者28人もの犠牲者を出した熱海市の大規模な土石流災害が発生。静岡県は2022年7月、自然由来の重金属など汚染土壌の盛り土を禁止する厳しい条例を施行した。
汚染土壌があれば、JR東海が環境アセスで示したようにただ「適切に処理」するだけでは済まされなくなった。汚染土壌の発生を想定した上で、要対策土の発生置き場を決めて、適切な処理方法を示すことで、ようやく静岡県の許可が得られる――というプロセスが必要になったのだ。
2021年4月にJR東海が工事費を当初の約5.5兆円から1.5兆円増の約7兆円にした際、「藤島」の運搬費、設計費、整備費、環境調査費などを盛り込んだ。国も「藤島」を要対策土置き場として許可した。
さらに昨年10月29日、開業時期を2035年に仮置きした上で、総工事費を当初のほぼ倍額となる11兆円を見込むことを発表した。この中で難工事への対応1.2兆円を計上して、今回のオンサイト処理に伴う費用も盛り込まれた。
どんどん膨らむ費用の裏づけを得た上で、JR東海は2月4日の専門部会で正式に自然由来の重金属の汚染土壌を処理するオンサイト施設の建設を表明した。
同専門部会で、「藤島」では約6万立方メートルの要対策土処理が可能としてきたが、その予測には不確実性が高く、実際に発生する重金属等を含む汚染土壌が増える可能性があることまで言及した。
JR東海はカネと時間をかけることを選んだ
川勝知事は「藤島」の計画そのものの見直しを求めたが、当時、JR東海は従わなかった。それが静岡工区着工を年内に見据えるいまになって、オンサイト処理施設建設という大胆な計画見直しに舵を切った。
すでに着工したリニア沿線の各工区でさまざまなトラブルが発生し、その対応にJR東海は追われている。静岡工区はリニア全線の中でも、最大の難所と言われている。少なくとも10年間の工事期間が見込まれるのだ。
JR東海は、時間、費用を掛けてでも万全の策を講じることこそ、早期のリニア開業へつながることをようやく自覚したのだろう。


