オンサイト処理は部会であっさりと承認された

オンサイト処理を実施するには汚染土壌処理業の許可手続きが必要となり、維持管理、緊急時の実施でも法で求められる基準に適合した対策が求められる。

静岡市によれば、オンサイト施設は中間処理施設の位置づけであり、環境アセスの手続きを踏まなければならない濃縮土などの最終処分施設に比べて、許可手続きは短縮されるという。供用開始まで数年単位の期間は不要で、1年以内に縮められる可能性が高いという。

ただオンサイト施設でトンネル発生土を処理した実績は極めて少なく、トンネル掘削と並行して行った例はこれまでない。すでに着工しているリニア工事の他工区でもオンサイト処理は採用されていない。

しかし、南アルプスの険しい場所に位置し、適地が限られる静岡工区ではオンサイト処理を採用するのが合理的だとJR東海は説明した。2月6日の専門部会で、JR東海はオンサイト処理施設の候補地などを初めて示したが、県、専門部会とも何らの異論もなく、JR東海の提案をすんなりと受け入れた。

これで重金属等の要対策土の対話はすべて完了した。川勝知事時代のゴタゴタを思い返せば、あまりにあっけない幕引きである。

部会後の囲み取材で、記者の1人が「これまでと違い、非常に難しい課題が一気に解決している。過去のような徹底した議論もなく、簡単に対話が完了したのは驚きだ」などと専門部会の姿勢を皮肉ったが、JR東海の提案したオンサイト処理に疑問を投げ掛けたわけではなかった。

なぜ最初から「オンサイト処理」を提案しなかったのか

それではJR東海はなぜ、「藤島」に固執して、最初からオンサイト処理を採用しなかったのか?

そもそもJR東海は2014年8月に国土交通大臣に送付した環境影響評価書(環境アセス)で「リニア静岡工区では汚染土壌が発生する可能性はない」という見解を示していた。

険しい地形が続く南アルプス
 
険しい地形が続く南アルプス

この見解に静岡県は汚染土壌の発生を危惧した知事意見書を送った。

だがJR東海は「評価書に記載した通り、環境基準を超過する可能性は想定していない。工事中に想定とは異なる地質が見られた場合は適切に対応する」などと汚染土壌の発生を頭から否定していた。

実際には、南アルプス周辺は重金属の含有が想定される地質を有しているため、トンネル工事の発生土の一部は汚染土壌となる可能性を指摘する専門家らの意見が多かった。

それでも国は工事実施計画を認可し、2014年12月の品川―名古屋の両駅を皮切りに工事がスタートした。JR東海が「2027年開業」を最大の目標としていたから、厳格な環境アセスに縛られないで、何が何でも早期に工事を進めていくことを優先したのだろう。