医療機関が「良い薬」の処方率を競い、ボーナスも出る

かつては高齢者の薬の服用量が多かったスウェーデンですが、近年では減少しています。政府は毎年、高齢者が服用すべきではない薬のリストを作成しており、各医療機関にはその薬の処方実績を報告する義務が課せられています。さらに、医療機関や地域ごとに“悪い薬の処方率”を競い合っていて、政治家もこの数字を意識しています。自分の地域の処方率が高いと思われたくないようです。

一方で“いい薬リスト”もあり、効果が高く、副作用が少なく、価格も安い薬が掲載されています。処方した薬の90パーセント以上をこのリストに載った薬が占めていれば、医療機関にボーナスが支給される仕組みです。つまり、正しいことをするためのインセンティブがたくさんあるのです。

先ほど述べたように、スウェーデンではこの数十年、高齢者の健康状態が改善されてきたおかげで医療ニーズが減少しています。アメリカやその他の先進国では医療費が高騰し続けているのに、スウェーデンでは国民の健康水準が向上し、医療費が抑えられているのです。

高齢者が健康になれば医療費は抑えられる

その理由はいたって明快です。ここまで紹介してきた制度や取り組みがあるからです。医療提供者へのインセンティブ(薬の処方プログラム)に加え、地域に根ざしたケアや、高齢者の安全を守る実践的な取り組み(自治体の便利屋さんなど)が功を奏しています。

マーシー・コットレル・ハウル、エリザベス・エクストロム『The Gift of Aging じょうずに老いる』(KADOKAWA)
マーシー・コットレル・ハウル、エリザベス・エクストロム『The Gift of Aging じょうずに老いる』(KADOKAWA)

都市の道路には自転車専用レーンが数多く整備され、高齢者が低価格で自転車を手に入れられるよう支援も行われています。こうした包括的な転倒予防プログラムによって、高齢者の転倒事故は大幅に減少しています。

実用的で比較的安価、そして高齢者の生活の質を大きく高める取り組みが数多く導入されているのです。スウェーデンの医療関係者に、そこまで真剣に高齢者の健康と幸福を追求する理由を尋ねたところ、彼らは肩をすくめてこう答えました。

「当然のことですよ。そうするしかないですからね」

なんとスウェーデンらしい答えでしょう。

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