「推進派も苦言」杜撰な審議の進め方
原子力小委員会は、エネルギー基本計画が策定されるタイミングでは毎月実施されることがあるが、通常は数カ月に1回のペースで行われている。1回の会合はだいたい2時間枠でインターネット中継もされているが、審議はどのように進行されているのか。
「最初に、経産省の事務局が100ページ以上もある資料を30分くらいのスピードで説明します。その技術はすごいのですが、あまりにも早いので、関心のある人がネット中継を視聴してもよく理解できないと思います。
その後、21人の委員が3分ずつ自分の意見をスピーチします。残り時間は20分か30分しかありませんが、委員たちの発言や質問に対して経産省側が回答をして終わりです。議論は一切ありません。2時間の長丁場ですが、委員が多過ぎるからみんな言いっ放しで熟議になりようがないのです。
こう感じているのは私だけではなく、推進派の委員からも時折『もう少し丁寧な審議を行ってほしい』との意見が出ることもあります」
原子力小委員会はもはや形骸化しており、政府のエネルギー基本計画の大綱に基づいた原子力政策を追認するだけの機関になってしまっているようだ。
委員会を建設的で活発な議論ができるような場にするために、松久保さんは改善策を提起する。
「民主党政権の時は、原子力政策は基本問題委員会という名称で審議されていました。委員も賛成派と中立派、反対派がおおむね同数の構成でした。原発事故が起きたのでそうしたのだと思いますが、その当時はきちんと議論ができていたのです。バランスはある程度取れていましたが、人数をもっと減らして熟議することが重要です」
処分費用45兆円のゆくえ
いま、原子力政策の最大の難題となっているのは、福島第1原発の廃炉問題だろう。
溶け落ちた燃料デブリの取り出し開始時期が「30年代初頭」から「37年以降」へと大幅に遅れることになった。51年までとしていた廃炉も見通せない状況だ。燃料デブリは1~3号機に計880トンもあるとされ、廃炉費用は約8兆円と見積もられている。
「燃料デブリを取り出した後、建屋も解体していきます。燃料デブリの処理だけではなく、これから低レベル放射性廃棄物がどんどん出てきます。日本原子力学会が20年にまとめた報告書によれば、低レベル放射性廃棄物は最大で780万トンも出ると試算しています。それまで原発1基を廃炉にする時に放射性廃棄物は1万トンと考えられていましたから、見込み違いも甚だしいのです」
現在建設中のものや、廃炉にした24基も含めて日本に原発は60基。全部で60万トンと予測していたのが、福島の6基(4~6号機も含む)だけで780万トンのゴミが出るのだ。
松久保さんが怒りを滲ませながら語る。
「この低レベル放射性廃棄物の処分だけで、約22兆円かかると推計できます。51年の廃炉までの25年間で、追加で22兆円も貯めなければなりませんが、東京電力だけで払い切れるわけがありません。一体どうするんですか。
最終的には国民負担しか選択肢がないということになるのでしょうが、原子力小委員会ではそういう議論すらしないのです。問題提起しても、経産省の事務局は『ウチではやりません』と言います。見たくないものは見ないという姿勢なのです」
政府は事故処理にかかる費用について、廃炉費用の8兆円を含め、賠償費や除染費などで総額23兆4000億円に上ると想定している(うち東電の負担分は16兆円)。
これとは別に、さらに22兆円が上積みされるというのだ。合計で45兆4000億円に上る。

