原発回帰で利益を受ける委員も5割超
朝野賢司氏は、大手電力など電気事業者のシンクタンク・電力中央研究所で副研究参事を務めているから「直接的利益」を受ける立場と考えられる。
フリーキャスターで事業創造大学院大学客員教授の伊藤聡子氏はエネルギー問題や地方創生などをテーマに講演活動を行い、電力会社のイベントなどにも登壇している。
遠藤典子・早稲田大学研究院教授は、朝日新聞で「早大教授が語る脱『脱原発』」と紹介された記事で、「原発のリプレースにいますぐ着手を」と提言(24年10月1日付)。政府が大手電力などと設立した「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の運営委員を務めている。
「伊藤さんは電力業界のイベントやセミナー、広報誌になどにも多数出演されています。遠藤さんは経産省に重用され、複数の原子力関連の審議会に起用されています」
大橋弘・東京大学大学院経済学研究科教授も、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の運営委員を務める。
小野透氏は、日本経済団体連合会(経団連)の資源・エネルギー対策委員会で企画部会長代行を担う。日本製鉄グループのシンクタンク・日鉄総研の顧問でもある。
「大橋さんは、これまで規制改革推進会議、産業構造審議会など政府の審議会ではもはや常連です。小野さんは経団連の肩書からの参加で、産業界として原子力が必要だとの立場です。日鉄グループとしても、原子炉圧力容器の鋼板などで仕事の発注が受けられればいいというポジションですから、直接利益の受益者です」
小林容子氏は、原子力業界に関わる女性たちの国際NGO「ウィメン・イン・ニュークリア(WiN)」日本支部の理事。WiNは、原子力の分野で女性がリーダーとして活躍することを目標としている。近藤寛子氏は、事業コンサルティング「マトリクスK」のCEO。核融合の専門家として、電力会社や経産省などへのコンサルタントを行っており、「直接利益の受益者」といえそうだ。
豊永晋輔氏は弁護士で、キヤノングローバル戦略研究所の上席研究員も務める。法律家として、原子力損害賠償法の研究者であり、11~13年に原子力損害賠償・廃炉等支援機構に出向している。
佐藤丙午・拓殖大学国際学部教授は、毎日新聞のインタビューで「東電に一定の利益がないと廃炉も賠償もできない」として、柏崎刈羽原発の再稼働に理解を示す(25年11月22日付)。
「豊永さんは、原子力小委員会(24年6月25日)で第6次エネルギー基本計画(21年策定)にあった『可能な限り原子力依存度を低減』を削除するように求め、実際に24年12月の閣議決定でその文言はなくなりました。
佐藤さんは、拓殖大学総長だった森本敏・元防衛相の後任になります。森本さんは、核兵器をいつでも開発できる『核の潜在的抑止力』の必要性から原子力を推進していました。佐藤さんはそこまでゴリゴリではありませんが、賛成派です」
山下ゆかり・日本エネルギー経済研究所常務理事は、毎日新聞のインタビューで「国土が狭い日本では再生可能エネルギーの普及には限界がある。原発政策が動くことで脱炭素目標の達成も現実味を帯びる」と語っている(22年8月25日付)。
松久保さんがこう指摘する。
「日本エネルギー経済研究所は国からエネルギー関連の多くの事業を請け負っています。やや古い資料ですが、15年度事業報告書によれば、事業規模29億円のうち『受託等調査事業』が約22億円を占めていますが、その42%が国からの受託です」
決議すれば「18対2で圧勝」の不均衡さ
金融機関から委員に起用されているのが、みずほ銀行の田村多恵・産業調査部次長と、SMBC日興証券の又吉由香・サステナブル・ソリューション部マネジングディレクターだ。
田村氏は、24年に行われた「日本原子力産業協会」の年次大会で「英国のRABモデルなど海外事例から学ぶことは多い」と指摘(24年4月10日付「原子力産業新聞」)。RABモデルとは英国の原発支援策で、原発の建設費を稼働・発電前から、全額を電気料金に上乗せして回収できるという業者側にとって好都合な仕組みだ。
又吉氏は、内閣府原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会の委員を務めた。
「又吉さんのSMBCは原子力関連のための社債の発行、引受を取り扱っています。この人たちも原発を推進することで利益を受けています」
専門委員の3人はいずれも電力業界関係者で推進派だ。増井秀企氏は東京電力ホールディングス執行役員を経て、現在は原子力関連企業などでつくる日本原子力産業協会の理事長を務める。水田仁氏は、関西電力の代表執行役副社長。壬生守也氏は、電力各社の労組の連合体である電力総連(全国電力関連産業労働組合総連合)会長だ。
もっとも、委員たちがおのおのの信条や立場から原発に対して賛成・反対を表明するのは、個人の自由である。
しかし、この原子力小委員会の構成はどうなのか。
委員に政策決定権はないが、仮に決議すれば推進派が究極的には「18対2(中立1)」で圧勝するような委員の構成・選出のありようは、どう考えても著しく不公正かつ不均衡というほかない。恣意的な運用がされているのではないか、と疑われても仕方がないだろう。
