中高一貫校の人気が高まっている。私立中学・高校教諭の谷咲さんは「受験を突破してきたはずなのに、中1の一学期でついていけず落ちこぼれていく生徒がいる。これは、『中学受験で合格する力』と『中学以降で必要な力』が別物だからだ」という――。

※本稿は、谷咲『中学受験に向いてる子 向いてない子』(Gakken)の一部を再編集したものです。

勉強中に眠っている生徒
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中高一貫校で「深海魚」になってしまう子

「深海魚」という言葉をご存じでしょうか。中高一貫校に入学した後、成績が著しく低迷して浮上できなくなる生徒を指す、教育関係者のあいだでよく使われる比喩です。

「厳しい中学受験を経験したのに、なぜ?」と不思議に思うかもしれません。しかし、現場で子どもたちを見ていると、そこには明確な理由があります。

まず、実力以上のレベルの学校に入学した生徒に当てはまるパターン。入学直後は問題なかったとしても、授業内容が難しくなってくる中学2年生頃から徐々に成績の落ち込みが見られます。

また、「燃え尽き症候群」状態になってしまうパターン。「合格のために頑張る」と走り続けてきた子が、これからは何のために頑張っていけば良いのかわからなくなってしまう状態です。別の見方では、受験が終わったという解放感から「もう勉強しなくていいんだ!」と机に向かわなくなってしまう子もいます。その結果、受験期にコツコツ習慣化した学習リズムが崩れ、気がつくと下位層に沈んでしまうのです。

まとめると「深海魚化」の原因は大きく分けて二つあります。

①実力以上の学校に入り、どれだけ努力してもついていけないタイプ
②受験を終え、勉強の目的を見失ってしまったタイプ

合格は「ゴール」ではなく「スタート」

①は補習塾などのサポートによって立て直せる可能性があります。

しかし②のタイプは「勉強に対する姿勢」の問題なので、塾に任せたからといって状況が変わるとは限りません(実際、「深海魚」生徒の通塾率が高いことには驚かされました)。

受験という強い動機、いわば「学びの起爆剤」がなくなると、学ぶ理由を自分で見出せないのです。

中学受験はあくまで「手段」。教育方針に魅力を感じ、そこで実践する教育をお子さんに経験させたいという目的を果たすために、貴重な小学校の期間を受験に費やすのだと思います。しかし、一番大切な「入学後」に学ぶ意欲がなくなってしまうのは、本当にもったいないことです。

さらに中高一貫校の環境には、「リセットの機会が少ない」という構造的な問題もあります。公立中学なら3年で高校受験という節目があり、目標を見つけて再浮上するチャンスが訪れます。

しかし、一貫校では6年間同じ集団のまま進み、内部進学をクリアすれば受験もない。そのため、成績が下がっても「まぁいいか」と慣れてしまい、低迷期が長期化してしまうのです。

最初は焦っていた子も、次第に諦めるようになり、その状態を受け入れてしまう。この段階になると、子ども自身の中に「再び浮上したい」という強い意志が戻らない限り、「深海魚」状態から抜け出すことはできません。