ヨーロッパを牽引する経済大国ドイツが、GDPで世界3位に躍り出た。しかし、日独産業協会の隅田氏は、「ドイツ人は本当に働かない」と証言する。彼らの働き方の秘密とは何なのか――。

実質週休3日で毎日18時には退勤

ドイツ人は、プライベートを犠牲にして働くことはしません。休暇は年に6週間がスタンダード。3週間の夏休みをとり、残りは他の時期に1週間単位に分けて休みます。有給休暇と病気休暇、祝日を足すと、全部で50日以上。彼らは実質的に週休3日です。

さらに、残業もほぼしません。私はドイツで20年以上の勤務経験がありますが、赴任した当時は働き方の違いにショックを受けました。仕事が残っているのに、「また明日」と18時にはみんな帰ってしまうのです。

そうやって休んでばかりのドイツ人は、日本人よりも稼いでいます。ドイツの1人当たりGDPは、日本の約1.4倍。名目GDPも2023年に日本を抜いて世界3位となりました。ちなみに可処分所得の中央値(21年)は日本の2万1282ドル(USD換算)に対し、ドイツは3万5537ドルと、約1.6倍です。

これほどの差がついた背景にはさまざまな要因があります。そのうち、日独で長年の会社勤めをしてきた私が確実に言えるのは、「ドイツの職場は日本の職場より生産性が高い」ということです。ドイツ人は、なぜ短い時間で成果を上げることができるのでしょうか。

労働時間が短くて済む理由は、仕事の「準備」の違いでしょう。ドイツ人は過剰な準備をしません。たとえばセミナーを行う場合、日本では30分前には会場設営を行い、万全の状態で臨みます。一方ドイツでは、よほどの要人が相手でない限り、定時ちょうどに到着し、挨拶をしつつプロジェクターを出して、コンセントを探す……という調子。誰も文句は言いませんし、何も支障はありません。相手を待たせないようにという日本流の配慮は立派ですが、それが過剰だと、残業は増える一方です。

同様に、過剰な「報・連・相」もドイツにはありません。私はフランクフルトの老舗プライベートバンク・メッツラー社で働いていましたが、在籍中、稟議書や申請書はあくまで必要最低限でした。日本の多くの企業では、これらの書類作成に時間を取られ、積もり積もって長時間労働になりがちです。

なぜ稟議や申請が必要最低限なのでしょう。メッツラー社に限らず、ドイツの多くのリーディングカンパニーでは、個々の社員の自立・独立性が重視されています。自分で考え、自ら動く。自分が一国一城の主であるという意識を持つ。こうした人材だけが採用され、高い裁量と決定権が与えられます。放任でもマイクロマネジメントでもなく、「放牧」に成功しているからこそ、上司も部下もムダな時間を使うことなく自分の仕事に集中できるのです。

同僚に頼まれた仕事を遠慮なく断る理由

生産性の違いを生み出す最大の要因は、「企業風土」だと私は考えています。

たとえば、「空気を読む」ことを重視する日本の文化は、時には生産性を下げてしまいます。部下が遠慮して意見を言わなければ、そのチームは誤った意思決定をすることになりかねません。上司も、部下に悪いと思って曖昧な指示をすることで、かえってムダな仕事を増やしている場合があります。

特に空気を読んでばかりなのが、日本の会議です。上司の顔色を窺いながら数人が意見を述べ、ダラダラと話し合うが、結論は出ない。そんな光景を私も日本で数多く見てきました。

(構成=奥地維也)