「天一大量閉店」一体何が
「こってり」といえば、天下一品。京都・北白川で1971年に創業した「天下一品」は、鶏ガラや野菜スープを強火で煮込んだ「こってりスープ」に熱狂的なファンも多く、いまや全国に約200店を展開する、国内屈指のラーメンチェーンに成長した。
そんな天下一品の首都圏の店舗が、たった1年間少々で16店も閉店した。いずれも新宿・川崎・五反田などの一等地ばかり……仕事帰りにこってりラーメンを食べられなくなった天下一品ファンの喪失感は、計り知れない。
これらはすべて、天下一品とフランチャイズ契約を結んでいた「エムピーキッチンホールディングス」(以下:MPキッチン)系列の店舗であった。閉店した店舗はいずれも、同社が展開するつけ麺チェーンの「三田製麺所」、背脂黒醤油ラーメンの「伍福軒」などに、素早く転換された。
ファンからすれば、この2ブランドに天下一品を奪われたようなもので、いつしか「因縁のライバル」と称されることも多かった。
MPキッチン傘下の「三田製麺所」「伍福軒」と、一大ラーメンチェーンの「天下一品」。両者はつい最近まで、「フランチャイズ契約」という関係で繋がっていたにもかかわらず、なぜ提携解消に至り、いまは因縁めいた関係のように語られるのか。
正反対の立場と気風が招いたハレーション
もともとMPキッチン(旧社名「アトラスフーズ」)は、全国に約200店舗を展開する天下一品(天一食品商事)のフランチャイズ企業であった。天下一品からは商売に関する指導・食材の提供を受けつつ、一定のロイヤリティ(対価)を支払うことで、天下一品の赤丸看板を掲げることを許される。そんな契約のもと、MPキッチンは、首都圏に十数店の天下一品を出店してきた。いわば上下関係の“下”にあたる。
一方でMPキッチンは、自社で立ち上げたオリジナルブランド「三田製麺所」を2008年に出店。何かと昔気質な天下一品と違ってSNS活用・マーケティング戦略の立案にも積極的で、「つけ麺特化」「『製麺所』屋号」といった「専門店に見せるブランディング」など、独自の戦略を駆使して早々に50店を突破。天下一品と同様に、フランチャイズを募集するまでに成長した。
つまり「上下関係の“上”」としての顔を持つようになり、おなじ会社に、天下一品への服従を旨とする“下”と、自らがグループを率いる“上”が同居するようになったのだ。かつ両者は「創業者と『こってり』ラーメンを崇拝」「データ活用に積極的な、今どきの外食企業」という正反対の気風でもあり、何かとハレーションも起きやすかったのかもしれない。




