【田原】それを機に創業するわけですね。培養のほうでも進展はあった?
【出雲】沖縄の石垣島にクロレラを育てるプールがあって、そのプールをミドリムシ用に使わせてもらえるようにしました。直径45メートルで、学校のプールよりもずっと巨大です。これで大量培養する環境が整いました。
【田原】研究費は入ったし、プールもできた。だけど培養は頓挫している。そこはどうやって解決したのですか。
【出雲】発想を変えました。ミドリムシを食べる雑菌を蚊にたとえるなら、これまでは蚊帳を2重、3重にして菌の侵入を防ぐ技術を研究していました。でも、いくら蚊帳を重ねても、結局はどこかから蚊が入ってきてしまう。それならば蚊帳はやめて、蚊取り線香のように菌が寄りつかなくなるものはできないかと考え方を変えました。それでようやく、ミドリムシは平気でもほかの菌は気持ち悪くて入ってこられない培養液の開発に成功したのです。
【田原】具体的にはどういうものですか。
【出雲】それはちょっと……。コカ・コーラが製造方法を教えないのと同じで、教えられません。
【田原】なるほど、企業秘密か。これは特許取ったんですか。
【出雲】いえ、特許にすると技術の内容を書いて申請しなければいけないじゃないですか。コカ・コーラも特許にしていません。弊社も秘密です。
【田原】そうか、書いたら盗まれるおそれがあるのか。培養液の開発に成功して大量培養できたのはいつですか。
【出雲】05年の12月16日です。それでさっそくミドリムシの錠剤をつくりました。堀江さんには宇宙食で買ってもらって、それ以外の人には、サプリメントとして買ってもらおうと。
【田原】これはもう売っているのですか。
【出雲】06年から売っています。今年度は売り上げ20億円の見込みです。
【田原】バングラデシュのほうには?
【出雲】今年からを目指しています。バングラデシュに持っていって、栄養失調をなくすためにミドリムシをみなさんにお配りします。
【田原】すごいなあ。これで世界の栄養失調を解決したら、ノーベル賞ものですよ。
【出雲】賞はどうでもいいですけど、絶対、やりたいです。