アメリカの文系就職ランキングで1位になった教育系NPOのティーチ・フォー・アメリカ(TFA)。留学中にTFAに出合い、その日本版を立ち上げたのが松田悠介氏だ。松田氏は元体育教師で、社会起業家の間では“教育界の松岡修造”と呼ばれる熱血漢。早稲田・大隈塾で塾頭を務める田原氏と、日本が抱える教育の問題について、熱く語った。
松田悠介
1983年、千葉県生まれ。日本大学文理学部体育学科卒業後、体育科教諭として中学校に勤務。その後、千葉県市川市教育委員会教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程へ進学。卒業後、外資系コンサルティングファームを経て、Teach For Japan創設代表者として現在に至る。

【田原】松田さんはもともと体育の先生だったそうですね。でも、2年で辞めてハーバードに留学する。きっかけは何だったのですか。

【松田】勤めていた学校で、学級崩壊の現場を見たのです。先生は黒板のほうを向いて授業をしていて、子どもたちは携帯電話をいじったりお弁当を食べたりしている。さらに衝撃的だったのは、先生が職員室に戻ってきて、「今日も誰々がうるさかったから授業にならなかった」と、学級崩壊の責任を子どもたちに押しつけていたことでした。職員室では誰もそれを指摘せずに、あいづちを打っていました。

【田原】生徒たちが授業を聞いていなかったら、先生だっておもしろくないじゃない。どうして教師は、学級崩壊に対する危機感がないのですか。

【松田】学級崩壊しても給料が下がったりクビになったりしないからでしょうか。先生方はみな、はじめは情熱を持って現場に入ります。けれど、文化や制度によって悲しいことに情熱が消えていくのかもしれません。

【田原】現場に疑問を持ったなら、教師たちに働きかけて「きちんと話し合おうじゃないか」とやればいい。なのに、なぜアメリカに行っちゃうのですか。