【田原】そうか、ヒトラーか。

【松田】はい、それぞれ歴史的な背景が違う人たちが集まって議論するので、当然、唯一の正解はありません。多様な価値を認めたうえで、自分の考えを述べることが求められました。

【田原】松田さんは、リーダーシップについてどう語ったのですか。

【松田】正直にいうと、それまで私の人生の中でリーダーシップについてきちんと考えたことがありませんでした。だからついていくだけで精いっぱいで。

【田原】それは松田さんだけじゃないかもしれないね。日本は企業にしても、政府にしても、癒着と馴れ合いの構造だから、ヘタにリーダーシップを発揮すると排除されてしまう。そのような環境だと、リーダーシップを意識する機会も少ないでしょう。だからハーバードで驚いたと思います。そこで結論を聞きたい。松田さんにとってリーダーシップとは何ですか。

【松田】リーダーシップって、マネジメントとは違うんですよね。マネジメントとは資源をうまく活用することであり、学習して身につけられる。しかしリーダーシップは学んで身につくものではなく、主体性が必要です。その人の生き様そのものというか……。

【田原】なるほど、生き様ね。僕の言葉でいうと、リーダーシップは命を懸けるということです。リーダーシップは、もともと軍隊用語。命を懸けてみせることで、みんなもついてくるんですよ。その意味でいうと、日本の教育の問題は教師が命を懸けていないことにあるのかもしれませんね。

松田悠介
1983年、千葉県生まれ。日本大学文理学部体育学科卒業後、体育科教諭として中学校に勤務。その後、千葉県市川市教育委員会教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程へ進学。卒業後、外資系コンサルティングファームを経て、Teach For Japan創設代表者として現在に至る。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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