米国人上司が扉を開けていた理由
部下にうまく「使われる」ことも、上司たる自分の役目である――私はつねづねそう思っています。
いちいち指示しないと部下が行動を起こさず、困っているなら、まずは自分の行動を振り返ってみたほうがいいかもしれません。すべて自分の思い通りに事が運ばないと気が済まない、部下から提案があっても耳を貸さないタイプの上司の下では、部下は受動的にならざるをえません。部下なりに懸命に考え、先回りして仕事を進めても、最後に上司の一存で何もかもひっくり返ってしまうなら、無駄な努力はしないほうが賢明だからです。
その状況を変えたいなら、自分で動けばそれが評価されるということを、部下に伝える機会をつくるべきです。
以前、弊社に赴任してきていたアメリカ人男性エグゼクティブで、部下の尊敬を一身に集めていた人物がいました。彼は、部下の意見をとにかくよく聞いてくれたのです。個室を持っていましたが、ドアは開いたままでいつでも入れるようにしていた。アメリカ人上司というと私たちも少々構えるものですが、その壁を取り払おうという配慮です。
彼は「人間に口が1つしかないのに耳が2つあるのは、他人の意見をもっと聞かなくてはいけないという神様からのメッセージだ」と言っていました。まさにその通りだと思います。
私も部下にはよく「何か迷うことがあったら言ってね」と声をかけます。他部門との折衝などでは「私が出ていったほうが話が早いと思うならいつでも呼んでください」と伝えています。執務中も部下に「ちょっといいですか」と話しかけられたら、「もちろん!」と答えるようにしていますし、どんなに忙しくても話しかけにくいオーラを出さないように心がけています。感情の波が激しく、部下に「今日は機嫌が悪そうだから報告はやめておこう」と顔色を窺わせる上司などは論外ですね。