とはいえ、好き勝手に動く部下が欲しいわけではないですよね。節目節目でタイミングよく進捗などを報告しながら、適切に仕事を進めてもらいたいという上司がほとんどだと思います。

そこで「聞く力」に加えて、部下の資質に合わせた指導が必要になってきます。報告や進行のタイミングの勘所がよくわかっている部下には、「失敗したら一緒に謝りにいってあげるから、思い切ってやってごらん」と任せてみる。一方で、「何かあったら手遅れになる前に知らせてほしい」と念を押します。誰しも自分の失敗は言い出しにくいものですが、報告が遅れると状況はどんどん悪くなっていく。それは未然に防がなくてはいけません。

中には、そのタイミングがなかなかつかめない部下もいます。上司が苛立ちを感じるのは、自分が想定していた期限が過ぎても部下が仕事を終わらせていなかったり、報告を上げてこないときでしょう。このタイプには仕事を割り振る段階で、期限がいつなのかをはっきり伝えておくことです。部下から「そんなに早くですか」と言われることもありますが、そのときはそこで話し合い、期限を決め直すなりすればよいことです。

思う通りに動いてくれる、いわば自分のコピーのような部下を求めてしまうのは人としての性でしょう。しかしマネジメントの能力は、自分に欠けている能力や苦手な分野を補ってくれる人を、いかに味方につけるかにあるといっても過言ではないと思います。

そういう意味では、自分と異なる考え方を持つ部下がいたほうがいい。違いを受け止め、上手に生かしていくことが上司の度量をも広げるのです。

日本IBM理事 
鈴木あや

1956年生まれ。同志社大学卒後、84年IBMアジア・パシフィック入社。日本IBM購買部門を経て、2005年より現職。
(石田純子=構成 澁谷高晴=撮影)
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