本屋という場所は、実際に行って見てみないとわからない。島田さんは西日本のある県で、おばあさんが帳場に座る小さな本屋に入る。コミックの棚には『東大一直線』が並んでいた。

実際に行ってみないと

地図を拡大
本屋図鑑、旅の記録。(『本屋図鑑』より。画・得地直美)

『本屋図鑑』に掲載する書店は、2つのルールで選んだ。

47都道府県の本屋さんを紹介すること。

「図鑑」と銘打っているのだから、いろんなタイプの本屋さんを紹介するということ。

いろんなタイプとは、すなわち、店舗のサイズ、ロケーション、経営形態、棚の種類、を指す。

「棚の種類」に関しては、ある程度、知識があった。「店舗のサイズ」のことも、少しは知っていた。大きな店のほとんどは、複数の県で展開しているチェーン店か、ないしは、その県を代表する「地方の雄」ともいうべき本屋さんである。たとえ、行ったことがなくても、知人に聞くか、インターネットで調べれば、ある程度の下情報を得ることができた。

わからなかったのは、小さな町で長く続けている個人経営の本屋さんだった。こうしたお店の情報は、まずインターネットには出てこなかった。実際に行って見てみないと、なにもわからなかった。

ぼくは、google mapで「書店」と打ち込み、まずは、お店がいまもやっているかどうかを確認するために、電話をかけた。

僻地であればあるほど、いまはもうやめてしまった、という回答が多かった。または、いまは配達と外商が中心で、店内はガラガラなのだ、という話もよく聞いた。

ある西日本の県では、10軒に電話をかけて、10軒とも、そうした返事しか返ってこなかった。電話の声の主はおそらく、みな五十代以上の人だった。不審がられているのかもしれないと思った。行ったほうが早いと思って、飛行機で行った。