50年間も続いてきた「暫定税率」

ガソリンの暫定税率の年内廃止が固まった。ガソリンにかかる税金は本則では1リットル当たり28.7円だが、暫定税率としてこれに25.1円が上乗せされてきた。暫定税率は、1974年に道路整備財源の確保を目的に導入されたが、「暫定」と言いながら延長され、50年も続いてきた。また、ガソリン税を含めたガソリン価格に消費税が課税されており、「二重課税」になっている。

衆院予算委で答弁する高市首相=2025年11月10日午後
写真提供=共同通信社
衆院予算委で答弁する高市首相=2025年11月10日午後

原油価格の上昇や円安によって国内でのガソリン価格が大幅に上昇する中で、暫定税率を廃止することでガソリン価格を引き下げるべきだという議論が続いてきた。中でも国民民主党は価格高騰時に暫定税率を免除する「トリガー条項」の凍結解除を求めるなど、この問題に真っ先に取り組んできた。

2023年11月の岸田文雄内閣時には2023年度補正予算案に国民民主党が賛成したが、賛成理由としてガソリン税を引き下げる「トリガー条項」の発動に向け、自民、公明、国民民主の3党の政策責任者で協議を進めていくことを確認したためとしていた。当時、玉木雄一郎代表は「覚悟を持って今回は賛成しましたので、トリガー条項の凍結解除はやりきりたいと思います」と述べていた。ところが、その後もトリガー条項が発動されることはなく、減税は実現しなかった。国民民主党からすれば、裏切られた格好になった。

2022年からの補助金総額は8兆円にのぼる

2024年10月の総選挙で国民民主党は7議席から28議席に躍進。その勢いをかって12月にはガソリン減税を実現する法案を衆議院に提出した。法案では、トリガー条項の凍結解除だけでなく、暫定税率そのものの廃止にまで踏み込んだ。これがその後の野党による暫定税率廃止の流れを作ったとも言える。

しかし、石破茂政権はガソリン減税には遅々として踏み出さなかった。3月になっても、石破首相は「なるべく早く結論を出してしかるべきものだと思っている」と述べるに止まっていた。

2025年7月の参議院選挙で情勢不利と見た自民党の森山裕幹事長が暫定税率の廃止を明言。それでも自民党が大敗したこともあり、7月30日には与野党で暫定税率の廃止について合意に至った。高市早苗内閣に代わって、年内ではなく年度内といった声が政府・自民党から出たが野党が猛烈に反発、年内の廃止にようやくたどり着いた。

一方で政府は、ガソリン価格を引き下げるために補助金を出し続けてきた。2022年1月に「緊急対策」のガソリン価格激変緩和措置として導入され、石油元売会社に価格引き下げ分の補助金を出してきた。その総額はすでに8兆円を超えている。年間2兆円以上の補助金が元売り企業に支払われたわけだ。