伝統的な「男は仕事」という価値観と「男性も家事や育児をすべき」という新しい価値観の狭間で葛藤する男性が増えている。リクルートワークス研究所研究員の筒井健太郎さんは「『育児休業の推進』や『男性の育児参画』などの政策・制度は整いつつある一方、『男は仕事で成果を出してこそ』といった古い価値観も根強く残っている。相反する社会的期待の中で調整を迫られ、男性たちは葛藤しているのだ」という――。

変わりゆく“男らしさ”を見つめ直す

現代の男性たちは、仕事では成果を、家庭ではケアを求められています。

「家事も育児もできて当然」という新しい理想と、「男は仕事で結果を出してこそ」という古い期待。そのはざまで、行動と意識のあいだに深いズレが生まれています。

社会構造の変化に適応する難しさは、ジェンダーを問わず多くの人が抱えていますが、とりわけ家族を持つ男性にとっては、そのプレッシャーがより複雑に絡み合います。

変化を迫る社会と、内面に残る“伝統的な男らしさ”との間で揺れながら、多くの男性が静かな葛藤を抱えているのです。このねじれた時代に、私たちは“男らしさ”をどう見つめ直していけばよいのでしょうか。

たくさんのドア
写真=iStock.com/Eoneren
※写真はイメージです

理想と現実のはざまで揺れる父親たち

かつての父親像は、「仕事一筋で家族を養う大黒柱」でした。しかし今、社会の空気はまったく違います。「家事も育児もできて当然」「家のことは配偶者やパートナーと分担するのが新しい常識」。そんなメッセージが、SNSや企業広告、行政のキャンペーンなどを通して日々発信されています。男性が家庭に関わることが“理想的な父親像”として語られ、企業では育児に積極的な男性社員がロールモデルとして紹介されることも増えました。

けれど、その理想はあまりにも高く、そして複雑です。仕事でも成果を上げ、家庭でも十分に家族と向き合う“スーパーファーザー”という理想像は、現実の多様な男性像とは必ずしも一致しません。それでも社会も家庭も、それを当然のように期待してくる。その板挟みのなかで、心身の余裕を失い、静かに葛藤する男性が増えています。理想と現実のはざまで、いま多くの男性たちが「どう生きればいいのか」を模索しているのです。