「不思議」だからこその魅力
こうした理路、すなわち、「日本国民の総意に基く」にもかかわらず、「世界中から尊敬されて」いる理由を探りたがる私たちの理屈が、トランプ大統領を魅惑しているのである。言うまでもなく、そんなところまで彼が知っているはずも、調べているはずもない。
だが、日本人たち自身が、天皇や皇室へのストレートな尊敬を表明する機会は、そう多くはない。たしかに、直接、敬意を示してる人たちやメディアもあるとはいえ、トランプ氏の目や耳に入るほどに大っぴらとは言いがたいのではないか。
「日本国民」が尊敬している姿は、目立たない。それどころか、日本人たちが「尊敬される」理由を探っているほどである。だから、天皇や皇室は、トランプ氏のみならず、日本の外にいる人たちにとっては、より一層、不思議というか、不可思議な魅力を放つ。日本人たちが尊敬しているのに、「尊敬されている」訳を知りたがる、そんな存在であるからこそ、そこには解き明かしきれない神秘があるに違いない、そうトランプ氏は思うのではないか。
英国王室との決定的な違い
かたやトランプ氏は、英国王室に対しては、より実質を求めるというか、プラグマティックな態度に終始している。たとえば今年3月には、英国の大衆紙The Sunの「英国国王による国賓訪問時のドナルド・トランプへの『秘密のオファー』」との記事を引用して、「国王を愛している。とてもいい感じだ!」とポストしている。
もちろん、天皇が政治的機能を有しない点は考慮しなければならないが、それでも、トランプ氏が今回の訪日で天皇とMLBロサンジェルス・ドジャースの大谷翔平選手について、天皇陛下と語りあった様子とは、大きく異なる。記者団に向かって、陛下について「グレート・マン(偉大な人物だ)」とアピールする場面もあった、と朝日新聞は報じているように(「天皇陛下がトランプ大統領と会見、6年ぶり 大谷翔平選手も話題に」朝日新聞、2025年10月27日19時01分配信)、その尊崇の念を隠していない。

