大阪・関西万博が閉幕した。今後、開催地である夢洲では、日本で初めての総合型リゾート(IR)・カジノ施設の開業が計画されている。世界的建築家の山本理顕さんは「大阪に住む人々にとってプラスになるとは思えない。そもそもこの計画の責任者は誰なのか。責任の所在があいまいなまま進むのは危険だ」という。ライターの山川徹さんが聞いた――。(第2回/全2回)
建築家の山本理顕さん
撮影=西田香織
建築家の山本理顕さん

万博の責任者が誰かわからない

――山本さんは、開幕前から大阪・関西万博に対して、疑義を呈されています。閉幕となりましたが、懸念は払拭されましたか?

【山本(以下同)】いえ、その逆で危惧した通りのことが起こったと感じています。

大阪万博への疑問点は、開催前もいまも変わりません。最大の疑問は、責任者は誰なのか、ということです。

もともと大阪万博は、大阪府議会や大阪市議会で絶対的多数を占める維新の会と、維新の会に協力的な大阪の経済界が誘致しました。その後、万博を推し進めたのは、国や地方自治体、経済界が手を組んで立ち上げた「2025年日本国際博覧会協会」(以下、博覧会協会)です。

その代表理事には一般社団法人日本経済団体連合会 名誉会長の十倉雅和さんがついています。ただメディアに出てくるのは事務総長の石毛博行さんです。誰が責任者なのか、そうでないのか。あるいは府知事なのか、大阪市長なのか。誰もはっきりしたことを言わない。

開催前から岸田首相(当時)をはじめとして担当の大臣や国会議員、大阪府や大阪市の首長などさまざまな人が万博について発信してきました。それぞれが、どのような立場で、どのような責任から発言しているのか。当初から、まったく分からなかった。

もはや意図的に責任者が分からないような仕組みにしているのではないかと感じるほどです。

責任者が不在で、責任の所在が不透明なら、失敗しても誰も責任をとる必要がない。国家が係わる事業なのですから、責任の所在は隅々まではっきりさせなくてはなりません。にもかかわらず、開幕中、責任者不在の構造は、変わりませんでした。

お盆期間中に、地下鉄のトラブルで3万人の来場者が帰宅困難になるトラブルが起きました。実際、負傷者も出ました。一部のパビリオンがそれぞれの判断で帰宅困難者を受け入れたようですが、本来は博覧会協会が中心になり、非常時の対応を各パビリオンと調整しておくべきでした。最初から誰も責任をとるつもりがない。だから、混乱が起きてしまったのでしょう。