闇バイトと疑っても手を染めてしまうのはなぜか。犯罪ジャーナリストの多田文明さんは「私が取材した一児の母である30代の女性は、SNSで探した日払いバイトに行くと、途中で紙袋を渡され闇バイトを疑った。しかし、そうした疑問をぶつけたのは仕事の上で一番身近に感じていた指示役の男性であり、簡単に丸め込まれてしまった」という――。
※本稿は、多田文明『人の心を操る 悪の心理テクニック』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
なぜ闇バイトと気づいても、手を染めてしまうのか
接触の回数を増やして信頼を得る
×打ち合わせの回数はなるべく少なくする
○打ち合わせや雑談など接触の回数を増やす
近年騒がれている闇バイトのニュースをみていると、犯罪に手を染めてしまった人たちは「どうして犯罪だと気づいて、途中でやめないんだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。実はここにも、だまされている本人も気づかないような罠が潜んでいるのです。
私が取材したのは一児の母である30代の女性。子どもを保育所に預けているスキマ時間に仕事ができればと思い、SNSで「日払いバイト」と検索して「日給1万5千円! 平日9時から18時の間で週4日くらいできる方」という求人を見つけます。さっそくDM(ダイレクト・メール)で応募し、相手からの返信で「暗号資産の仕事」と連絡があり、仕事の内容の説明を受けます。
仕事の説明をした男性によると「これは相対取引です。本来なら互いに顔を合わせて取り引きするものを、遠方に住んでいて直接会うのが難しい両取引先に代わり、自分たちが代行して取り引きしています」といいます。
女性は暗号資産についての知識はありませんでしたが、「それなら私にもできそう」とやってみることにします。彼女は闇バイトの存在は知っており、あやしい仕事には手を出さないように注意していましたが、もっともらしいビジネスの説明をされ、その時点では犯罪だと気づけなかったそうです。
女性の初仕事は、路上で中年の男性が持ってきた荷物を受け取り、それを指定した場所に届けるという簡単な仕事でした。つゆほども闇バイトとは思わずにこなします。
しかし、彼女は2回目の仕事で「闇バイトかもしれない」と気づくことになります。

